はじめに
 電子機器の小形化薄形化に伴い、アルミ電解コンデンサの小形化要求が高まっている。アルミ電解コンデンサは、他のコンデンサと比べ、単位面積当たりの静電容量が大きく安価であるという特長を生かし、幅広い市場分野で使用されている。またデジタル化が急速に進む中、高性能化も重要な要素として求められている。それらを可能とするのが、低インピーダンス、高リプル対応、長寿命、高温度対応等、より優れた性能を持つコンデンサであり、この様なニーズに応えるため更なる特性向上に向けて研究、開発が進められている。

超低インピーダンスアルミ電解コンデンサ「HZシリーズ」
 当社は、パソコンをはじめ情報通信機器、AV機器などの電源平滑回路用に低インピーダンス仕様のアルミ電解コンデンサを豊富にラインアップしている。
 CPUの高速化、高周波化に伴い、特にパソコンのマザーボードなどに使用されるアルミ電解コンデンサでは、更なる低インピーダンス化と高許容リプル電流化が求められている。これまでスイッチング電源用低インピーダンス品として「PWシリーズ」を開発し、好評を得てきた。しかし、更なる低インピーダンス化が求められる中、新たな電解液と電極箔の開発が不可欠となった。そこで開発されたのが、エチレングリコールと水を主成分とした電解液である(以降、水系電解液とする)。これまで、電解液中の水分は電極箔の性能を著しく劣化させ、また電解液の耐久性が維持できなくなるとされてきた。しかし、高電導度化が可能でありインピーダンス低減が期待できることから、水系電解液の耐久性と電極箔の耐水性の向上に取り組んだ結果、開発に成功し、水系電解液と新電極箔を採用した「HDシリーズ」は「PWシリーズ」に比べインピーダンスを40%低減している。その後、電解液、電極箔の更なる改良に努め、「PWシリーズ」に比べインピーダンスを70%低減させた「HCシリーズ」を開発し、高まる低インピーダンス化への要望に応えてきた。更に高電導度の電解液、高安定電極箔の開発により、「HCシリーズ」と比較しインピーダンスを20%低減させた超低インピーダンス品「HMシリーズ」、また「HCシリーズ」比45%の超低インピーダンスを図った「HNシリーズ」を開発した。
 さらに昨年10月に開発した「HZシリーズ」は、高電導性水系電解液と低密度電解紙を使用する事により、インピーダンス値を現行の超低インピーダンス品「HNシリーズ」より更に30%低減する事に成功。16V 470μF定格品のインピーダンス値15mΩは、業界最高レベルの値となっている。
 インピーダンスの低減と耐リプル性能の向上によって、コンデンサの使用員数を削減することができ、実装基板の小形化、機器の小形軽量化をもたらすと共に、トータルコストダウンが図れるなどのメリットが生まれる。
図.1に各シリーズの高周波におけるインピーダンスの低減を示す。
 

小形・高リプル長寿命アルミ電解コンデンサ「PZ、CSシリーズ」
 今後、モバイル市場の更なる拡大が期待される。モバイル機器に搭載されるコンデンサには、小形化・薄形化・軽量化が求められると同時に、高許容リプル電流化が要求されている。このような要望に応えるべく、当社がこれまで中高圧アルミ電解コンデンサで培ってきた技術をベースに、高温での蒸散性をより小さく抑えた高安定性電解液、耐熱性を向上させた封口ゴム、エッチング倍率を上げつつも信頼性を高めた高電圧高容量電極箔の開発に取り組み、「PZシリーズ」、「CSシリーズ」の開発に成功した。同製品は、長期に於ける蒸散が少なく安定性のある電解液と、長期に渡っての高温度下においても物性変化が小さく安定性が高い封口ゴムによって長寿命化を実現し、また、高容量電極箔の開発により小形化を実現した。「PZシリーズ」の仕様は以下の通りである。ケースサイズはφ10×31.5mmL〜φ18×40mmLの10サイズ、カテゴリ温度範囲は−25〜+105℃、耐久性は105℃ 2,000時間を有している。定格電圧範囲は200〜450V、定格静電容量範囲は18〜470μF、定格リプル電流は180mA rms〜1,270mA rms(at 105℃ 120Hz)をカバーしており、従来品「PTシリーズ」と比較し、20〜25%の小形化を図っている。
 また、105℃ 10,000時間保証の長寿命品「CSシリーズ」の仕様は以下の通りである。ケースサイズはφ10×16mmL〜φ18×35.5mmLの10サイズ、カテゴリ温度範囲は−40〜+105℃(450V品のみ −25〜+105℃)、耐久性は105℃10,000時間(φ10品のみ8,000時間)を有している。定格電圧範囲は160〜450V、定格静電容量範囲は6.8〜330μF、定格リプル電流は275mA rms〜3,220mA rms(at 105℃ 100kHz)をカバーし、従来品「CAシリーズ」と比較し、約20%の小形化、25〜80%の高許容リプル電流化を実現している。これらの2シリーズは、スイッチング電源及び照明機器、電源アダプターの入力平滑用コンデンサとして渇望されている小形長寿命化と高許容リプル電流化を同時に実現し、特に「CSシリーズ」は、アルミ電解コンデンサとしては実現が難しかったメンテナンスフリーのニーズに応えた製品となっている。
 

終わりに
 地球環境問題が大きく取り上げられている現在、当社はその重要性を認識し、環境対応に積極的に努めている。従来、アルミ電解コンデンサの外装には定格表示を主目的に塩化ビニル(PVC)スリーブを使用してきたが、焼却時にダイオキシンを発生させる可能性があるため、今回紹介した製品は全てにポリエチレンテレフタレート(PET)スリーブを採用している。また、廃棄された電子機器に使用されている鉛含有はんだ、鉛含有メッキから酸性雨により鉛が溶け出し、土壌、水質汚染を引き起こし生態系に深刻な影響を及ぼしており、鉛についてもダイオキシンと同様に早急に解決しなければならない問題の一つである。当社は、リード線のメッキ部分の鉛フリー化を目指し、これまでの錫−鉛合金によるメッキから鉛フリーはんだとの相性も良い錫100%または錫−ビスマス合金の鉛フリーメッキを採用したリード線への移行を顧客承認を得ながら進めており、地球環境に優しい製品を「Geo Capシリーズ」と総称し、推進している。
 今後、デジタル機器・ネットワーク関連機器市場は急速に拡大していくことが予想される。当社は、更なる小形化、高温度対応、高許容リプル対応、低インピーダンス、低ESR化、環境対応に向け取組み、これらの市場のニーズに積極的に応えていく。

ニチコン株式会社 大野工場
技術部 技術課
笠原 崇/佐藤 要亮

2003年1月23日付 電波新聞掲載

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