「導電性高分子アルミ固体電解コンデンサの最新技術動向」
 
1.はじめに(概要)
<導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ FPCAPシリーズ 樹脂モールド形  VA・VB・UA シリーズ>

<導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ
FPCAPシリーズ 樹脂モールド形
VA・VB・UA シリーズ>

 導電性高分子を陰極材料に用いた導電性高分子アルミ固体電解コンデンサは、高周波領域において優れたESR(等価直列抵抗)特性を有することから、PCやその周辺機器、据置型ゲーム機等のデジタル機器に多く採用されている。
  近年「ウルトラブック」に象徴されるように、電子機器の薄型・軽量・低価格化が著しく進む中で、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサとしても、低背化などの要求に対応できるかが重要な課題になっている。また、デジタル機器の高周波化が進む中で、ノイズフィルタとしての効率を上げるためにESR・ESL(等価直列インダクタンス)の低減や、DC−DCコンバータの一次側入力用としての高耐電圧化の要求が強くなっている。本稿では、このような市場要求に応えるために開発した樹脂モールド形導電性高分子アルミ固体電解コンデンサの最新技術について紹介する。

2.構造・特長

 捲回形導電性高分子アルミ固体電解コンデンサの内部構造を【図−1】に示す。捲回形アルミ電解コンデンサと比較しても、陰極電解質に電解液を用いているか、導電性高分子を用いているかだけの差であり、陽極箔・陰極箔にリード端子を接続してセパレータを介して捲くという素子構造に大きな差はない。これは確立された生産技術の製造設備が使用できる利点となる。今回開発した樹脂モールド形導電性高分子アルミ固体電解コンデンサは、この利点を最大に生かし、より低背で生産コストを抑えた導電性高分子アルミ固体電解コンデンサをコンセプトに開発を行ったものである。
  【表−1】に、一般的な積層方式の樹脂モールド形導電性高分子アルミ固体電解コンデンサを含めた構成材料及び製造方法の比較を示す。また【図−2】に、概略構造比較図を示す。本開発品は、陽極箔・陰極箔にリード端子を接続してセパレータを介して捲くというこれまでの生産技術を応用し、より素子を薄くするため楕円に捲き、その素子を独自工法で成形することで捲回構造にも関わらず、積層方式の内部素子と同等の低背を実現している。また、積層方式の導電性高分子アルミ固体電解コンデンサやタンタル固体電解コンデンサ同様に両極リード端子を対称に引出すため、陰極リード端子は陽極リード端子と反対側に突出させて陰極箔と接続する。その後、導電性高分子を形成した素子をリードフレームに搭載しエポキシ樹脂で成型封止する。リードフレームに搭載しエポキシ樹脂で成型封止する構造は、積層方式の導電性高分子アルミ固体電解コンデンサやタンタル固体電解コンデンサと同じであるが、両極リード端子を対称に引出すことで両極共にリード端子とリードフレームとの接続が可能になり、接続に高価な導電性接着材料を全く使用していないことが積層構造との違いであり、ニチコンの樹脂モールド形導電性高分子アルミ固体電解コンデンサの特長でもある。接続に関しては、両極リード端子の素材がアルミ二ウムであるため、従来安定した接続品質の確保が困難であったが、リードフレームに特殊加工することで、抵抗溶接法でありながら省エネルギー・省スペースで安定した接続品質(強度・抵抗)を確保できる接続技術を確立した。
  これらの技術から、捲回形導電性高分子アルミ固体電解コンデンサの主要材料と生産技術・製造設備を利用し、且つリードフレームとの接続にもリード端子を直接溶接することで、接続にも高価な導電性接着材料を使用せず単純構造を実現し、低価格化を可能にしたものである。
  今回、製品サイズ7.3mm×4.3mm×2.8mm(製品高さ3.0mmMAX)の標準品「VAシリーズ」、低ESR「VB・VCシリーズ」、製品サイズ7.3mm×4.3mm×1.9mm(製品高さ2.0mmMAX)の低背品「UAシリーズ」、低ESR「UBシリーズ」をラインアップした。【表−2】

【図−1:捲回形導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ内部構造】

図−1:捲回形導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ内部構造

【表−1:導電性高分子アルミ固体電解コンデンサの構成比較】

  アルミケース
封口ゴム封止
エポキシ樹脂封止
  一般品 開発品 一般品
素子構造 捲回 捲回 積層
陰極引出 アルミ箔
リード端子
アルミ箔
リード端子
導電性接着材料
(カーボン+銀)
外部端子 リード端子 リードフレーム リードフレーム
コスト ←

【図−2:概略構造図(一般的な積層方式の導電性高分子アルミニウム固体電解コンデンサ比較)】

図−2:概略構造図(一般的な積層方式の導電性高分子アルミニウム固体電解コンデンサ比較)

【表−2:製品ラインアップ】
  「VA・VB・VCシリーズ」 7.3mm×4.3mm×2.8mm(製品高さ3mmMAX)
  「UA・UBシリーズ」   7.3mm×4.3mm×1.9mm(製品高さ2mmMAX)

※( )内の数字はESR規格値(mΩ)

定格電圧[V]/容量[µF] 2.0 2.5 4 6.3 16 25
15          

VA (60)

UA / UB
(70 / 40)
27        

VA / VB
(55 / 30)

UA / UB
(55 / 40)
VA / VB
(60 / 30)
33         VA / VB
(55 / 30)
 
47         VA / VB
(55 / 30)
 
100      

VA / VB
(25 / 20)

UA (25)
   
150    

VA / VB
(20 / 15)

UA (20)
VA / VB
(25 / 20)
   
220 UA / UB
(15 / 9)
VA / VB / VC
(20 / 15 / 9)
VA / VB
(20 / 15)
     
330 VA / VB / VC
(20 / 15 / 9 )
         
3.高耐電圧化

 高リプル電流化が進む中、電流ノイズフィルタとしての効率を上げるため、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサの特長である低ESR特性を維持しながら高耐電圧を実現する技術が確立されており、当社は捲回形導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ125V定格品まで上市している。この高耐電圧化を実現するうえで重要な役割を果たしているのが、導電性高分子形成手法とセパレータである。従来の化学重合で形成する手法では、導電性高分子中に残留する未反応物や副生成物が、誘電体酸化皮膜欠陥部を介して電気的にコンタクトして耐電圧を低下させるという問題があった。そのため、今回導電性高分子中に未反応物や副生成物を伴わない純粋な導電性高分子材を形成する技術を用いることで高耐電圧化を可能とした。また、セパレータは、材質・密度・厚みを最適化することで、耐電圧に対する性能を高めている。
  セット機器メーカーでは回路電圧に対して、耐電圧安全マージンを設定し、コンデンサの定格電圧を選択していることから、ノートPC等においては、DC−DCコンバータの一次側入力用として高耐電圧の低背形導電性高分子アルミ固体電解コンデンサが強く求められている。本開発品は、アルミ電極箔を使用した樹脂モールドチップ形では、業界最高レベルの25V定格までをラインアップしており、今後更に高耐電圧化が可能であることから、一次側入力用のコンデンサとしても適している。

4.低ESR化

 積層方式の導電性高分子アルミ固体電解コンデンサは、数個のコンデンサ素子を並列接続(積層)しているため、構造(回路)上低ESR化が比較的容易と言える。本開発品では、主にセパレータ及び導電性高分子形成手法の最適化により、捲回素子単体として低ESRを実現し、2.5V定格電圧下においてESR規格9mΩ品の、製品サイズ7.3mm×4.3mm×2.8mm(製品高さ3mmMAX)の「VCシリーズ」、製品サイズ7.3mm×4.3mm×1.9mm(製品高さ2mmMAX)の低背品「UBシリーズ」をラインアップしている。CPUの高速化・高機能化による動作周波数の高周波化から、電源回路に使用されるコンデンサには、供給電位を安定化するため、瞬時に蓄えた電荷を放電することができる低ESRのコンデンサが求められている。一般的なアルミ電解コンデンサと、当社開発品の樹脂モールド形導電性高分子アルミ固体電解コンデンサの周波数特性比較を【図−3】に示す。今後更なる低ESR化要求に応えるため、捲回素子構造(構成材料)の検討や、導電性高分子形成手法の最適化を進めている。

【図−3:周波数特性比較】

車載用「充電器一体型DC-DCコンバータ」

5.今後の開発取組み

 今後更に電子機器の薄型・軽量・低価格化が進むことが予想される。特にPC、TVといった主力電子機器の低価格化は著しく、今後電子部品においても、品質はもとよりセットの低価格化に貢献する製品を供給できるかが重要なポイントになる。また、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサは、優れたESR特性・温度特性を有しており、PCの電源回路平滑用途やノイズフィルタ用途以外にも様々な回路に使用され始めている。当社は、従来の市場のみならず新たな市場の開拓も視野に入れて、これまで述べてきた本開発品の特長を生かし、更なる低背、大容量、高耐電圧、低ESR化に取り組んでいく。

ニチコン株式会社
2013年1月31日付 電波新聞掲載
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