前のページに戻る

2017年2月28日

安定した高周波駆動が可能なSiC電力変換モジュールを開発
―大型放射光施設「SPring-8」加速器用電源で実証成功、
高度医療用加速器電源に応用へ―

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
               ニチコン株式会社
国立大学法人大阪大学
国立研究開発法人理化学研究所

 NEDOプロジェクトにおいて、ニチコン株式会社、大阪大学、理化学研究所は、機器の小型化等による省エネルギー化の実現が期待される次世代半導体SiCを用いて、安定した高周波駆動が可能な電力変換モジュールを開発し、高精度、高安定性が求められる大型放射光施設「SPring-8」のX線自由電子レーザー施設SACLAの加速器用電源での実証に成功しました。
 ニチコン株式会社は、今後、本成果を踏まえ、高度医療用加速器電源、電気自動車などから一般家庭へ電力を供給するV2H(Vehicle to Home)や公共・産業用蓄電システムなどへの応用を進めます。また、大阪大学を中心に、今回の成果を信頼性評価方法などのガイドライン整備や国内外の標準化活動に反映させることで、今後の次世代半導体SiCを用いた電力変換モジュールの実用化と普及の促進を図ります。

次世代半導体SiCを用いた電力変換モジュール(サイズ86×84×24.8o)(左)と、搭載予定の電源製品(V2Hシステム(中)、公共・産業用蓄電システム(右))

次世代半導体SiCを用いた電力変換モジュール(サイズ86×84×24.8o)(左)と、
搭載予定の電源製品(V2Hシステム(中)、公共・産業用蓄電システム(右))

1.概要

 近年、電気機器の省エネルギー化が求められ、既存のSi半導体より低損失かつ高速スイッチングが可能で消費電力が小さい次世代半導体SiC※1の実用化が期待されています。また、既存の半導体モジュールよりも高周波駆動が可能で、インダクタなどの構成部品を小さくすることができます。従って、電源製品の小型化が可能であり、使用部材の削減や製品輸送時のエネルギー削減など、様々な省エネルギー効果の波及にも期待できます。しかし、高周波駆動には、ノイズ増大やそれに伴う安定性への影響など、実用化の課題があります。
 今回、NEDOプロジェクト※2において、ニチコン株式会社、国立大学法人大阪大学、国立研究開発法人理化学研究所は、次世代半導体SiCを用いて、安定した高周波駆動が可能な電力変換モジュールを開発し、現行体積比2/3サイズの電源装置の小型化を実現しました。これを高精度、高安定性、低ノイズが求められる大型放射光施設「SPring-8」のX線自由電子レーザー(XFEL※3)施設「SACLA」※4の加速器用電源に搭載し実証することで、電力変換モジュールの高周波駆動に伴うノイズ影響がないことを確認し、既存のSi半導体モジュールと遜色なく動作することの検証に成功しました。今後、ニチコン株式会社は、高度医療用加速器電源※5をはじめ、電気自動車などから一般家庭へ電力を供給するV2H(Vehicle to Home)や公共・産業用蓄電システムなどへの応用を進めます。
 また、高温環境で動作可能なSiC半導体モジュールは既存のSi半導体モジュールと同じ方法や基準で評価ができないことから、NEDOプロジェクトではSiC半導体モジュールの信頼性評価方法などのガイドライン整備や国内外の標準化活動に取り組んでいます。
主な活動として、大阪大学を中心に主要なデバイスメーカーや機器メーカーが参画するWBG実装コンソーシアム※6と、国内標準化機関(一社)日本電子回路工業会、(一社)電子情報技術産業協会や(一社)日本ファインセラミックス協会などとの連携体制を構築してきました。今回の検証結果をガイドラインや標準化活動に反映させることで、今後のSiC半導体モジュールの実用化と普及を加速します。
 なお、今回の成果は、2017年3月1日(水)〜3日(金)に、東京ビッグサイトで開催される「スマートエネルギーWeek 2017 第8回国際二次電池展」のニチコン株式会社ブースにおいて展示します。
(公式HP: http://www.batteryjapan.jp/)

2.今回の成果

 本プロジェクトでは、モジュール内にゲートドライブ回路※7を収納し、かつSiCパワーMOS-FET※8を採用して駆動周波数を高周波化することで、電力変換容量が数kW〜数十kWクラスのV2H、公共・産業用蓄電システムや高度医療用加速器用電源に適用できる電力変換モジュールを開発しました。また、周辺回路部材であるコンデンサ、トランスも小型化できることで、現行比2/3の製品体積を実現しました。
 このとき、電力変換モジュールの高周波駆動によるノイズ増大が懸念されたことから、回路全体のインダクタンスの低減と最適化※9を大阪大学とニチコン株式会社が共同で検討しました。開発した電力変換モジュールを加速器用偏向電磁石電源※10に搭載して、偏向電磁石の磁場安定性※11を測定しました。さらにX線自由電子レーザー(XFEL)のビーム輸送ラインの偏向電磁石をこの電源で励磁し、レーザー出力への影響※12について検証しました。その結果、レーザーが発振していること、およびレーザープロファイル(レーザービーム形状:下図参照)が変化していないことから、現行のSi半導体モジュールと遜色がないこと、そして高周波駆動によるノイズ影響※13がないことを理化学研究所と共同で確認し、性能検証に成功しました。

SACLAの写真(上)とレーザープロファイルのイメージ(右)

SACLAの写真(上)とレーザープロファイルのイメージ(下)

【用語解説】

※1 SiC
シリコンカーバイド(炭化ケイ素)。ケイ素と炭素の化合物で、これを用いて作った半導体デバイスと現行のシリコン半導体デバイスを比べると、内部の電力損失が1/100と小さく、高い周波数・高い温度(300℃程度まで)で使用することができる。
※2 NEDOプロジェクト
クリーンデバイス社会実装推進事業/次世代半導体を用いた超小型電力変換モジュールの多用途社会実装(2015〜2016年度)
※3 XFEL
XFELとは、X線自由電子レーザー(XFEL:X-ray free electron laser)の略称。近年の加速器技術の発展によって実現したX線領域のパルスレーザー。従来の半導体や気体を発振媒体とするレーザーとは異なり、真空中を高速で移動する電子ビームを媒体とするため、原理的な波長の制限はない。
※4 SACLA
理化学研究所と高輝度光科学研究センターが共同で建設した日本で初めてのXFEL施設。科学技術基本計画における5つの国家基幹技術の1つで、2006年度から5年間の計画で建設・整備された。2011年3月に施設が完成し、SPring-8 Angstrom Compact free electron LAserの頭文字を取ってSACLAと命名された。2011年6月に最初のX線レーザーを発振、2012年3月から共用を開始した。0.1ナノメートル以下という世界最短波長のX線レーザーを発振する能力を有する。
詳細は次のWEB。http://xfel.riken.jp/
※5 高度医療用加速器電源
陽子や重粒子を加速させてがん細胞に照射して治療する粒子線治療に用いる電源です。陽子、重粒子を加速させるために高精度・高い安定性の有する電源が求められる。
※6 WBG実装コンソーシアム
2013年に大阪大学の菅沼克昭教授を発起人として設立され、WBG(Wide Band Gap)半導体と呼ばれる省エネルギー技術の鍵を握る次世代パワー半導体(SiCやGaN等)の実装技術、評価方法の確立を目指す。デバイスメーカーから機器メーカーなどの主要関連企業37社が参画し、SiCモジュールの信頼性・標準化に向けた取組みを進めてきた。
http://wbg-i.jp/
※7 ゲートドライブ回路
マイコンなどからの制御信号から、パワーMOS-FETをオン/オフするためのゲート駆動電圧・電流信号へ変換する回路。
※8 パワーMOS-FET
大電力用MOS(Metal-Oxide-Semiconductor)電界効果トランジスタ。
※9 インダクタンスの低減と最適化
回路中のSiCパワーMOS-FETの損失増大や応答性低下を避けるために、回路中の配線パターンの工夫などで回路全体のインダクタンスを最も低減させた。
※10 加速器用偏向電磁石電源
電子ビームの軌道を変えるための電磁石を駆動させるための電源。
※11 偏向電磁石の磁場安定性
24時間の磁場安定性は規格値200ppmに対し、SiCモジュール電源は50ppmであった(但し電磁石ヨーク温度変化に起因する磁場変動分を含む)。
※12 レーザー出力への影響
XFELパルスエネルギーはSi半導体モジュール電源、SiCモジュール電源とも85μJで変わらなかった。レーザーパルスや電子ビーム軌道の安定性にも2台の電源間で差は見られなかった。
※13 高周波駆動によるノイズ影響
電源周辺の加速器制御およびモニター機器等への影響はなかった(オフラインにおいても同様に影響ないとの結果を得た)。

3.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
ニチコン株式会社 NECST事業本部 担当:古矢 TEL:075-241-2564
NEDO IoT推進部 担当:服部、栗原 TEL:044-520-5211
国立大学法人大阪大学 産業科学研究所 担当:菅沼 TEL:06-6879-8521
国立大学法人大阪大学 工学部 担当:舟木 TEL:06-6879-7709
国立研究開発法人理化学研究所 放射光科学総合研究センター
担当:原 TEL:0791-58-2800

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:藤本、津佐、坂本TEL:044-520-5151
E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp

以 上

ページの先頭に戻る