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2006年4月27日

高エネルギー円形加速器における誘導加速の研究で
平成18年度科学技術分野の文部科学大臣表彰
科学技術賞を受賞


  ニチコン株式会社は、新しい加速器として注目されている誘導加速シンクロトロンの誘導加速セルを駆動する高電圧パルスモジュレータを開発し、高エネルギー加速器研究機構殿(機構長、鈴木 厚人)に納入していますが、この開発を主導した当社徳地 明の活動成果が評価され、平成18年度科学技術分野での文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)を高エネルギー加速器研究機構の高山健教授らと共同で受賞しました。

業績名・受賞者は下記のとおり
業績名    「高エネルギー円形加速器における誘導加速の研究」
高山 健 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構・教授
小関 国夫 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構・研究機関研究員
鳥飼 幸太 独立行政法人放射線医学総合研究所・重粒子医科学センター博士研究員
下崎 義人 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構・研究員(科学研究)
徳地 明 ニチコン草津株式会社・特機部技術一課課長

 誘導加速シンクロトロンは高エネルギー加速器研究機構の高山健教授と木代純逸教授(故人)が考案した全く新しい概念に基づく円形加速器で、1MHzという極めて速い繰返しの高電圧パルスで駆動される誘導加速セルにより、電子やイオン等の荷電粒子を加速するものです。従来の高周波を使用したシンクロトロンに比べてビーム強度を大幅に上げられる特長を持つと共に、従来の高周波シンクロトロンでは加速できなかったウランのような重いイオンや音速程度の低エネルギーで入射されるイオンも加速できることから、ガン治療などを含め多目的な小形加速器の実現が期待されています。
当社はこの誘導加速シンクロトロンを実現する為、2001年から1MHzという従来にない高繰返しの高電圧パルスモジュレータの開発を高エネルギー加速器研究機構と共同で進めてきました。これによって高エネルギー加速器研究機構では、2004年10月に誘導加速による加速実験に世界で始めて成功し、2006年3月には誘導加速シンクロトロンが完全に実証されました。
 本高電圧パルスモジュレータは、従来達成し得なかった1MHzという極めて速い繰返しで、±2500Vの高電圧のパルスを、31kWという大電力で安定的に連続発生させることができるため、誘導加速シンクロトロンの用途のほか、プラズマ半導体プロセス、スパッター装置、表面処理、排ガス処理など幅広い産業分野への適用が期待されています。

高電圧パルスモジュレータの特長と仕様
1) 半導体スイッチであるFET(電界効果トランジスタ)を直列に使用し、出力電圧±2500Vp、出力電流25Ap、パルス幅250ns、繰返し1MHzの出力を連続発生させている。
2) 直列接続されたそれぞれのFETスイッチは光ファイバーで同時にON、OFFさせることにより、高電圧高繰返しのパルスのスイッチングを達成した。
3) 各FETには、異常を検出し、光ファイバーで制御盤に異常信号を送出する回路を設け、一個でもFETに異常が検出されると、高圧充電器の出力を停止すると共に、トリガ信号を停止し、高電圧パルスを出力しないようインターロックシステムを設けた。これにより、FETの連鎖的故障を未然に防止し、半導体スイッチの高電圧スイッチングの信頼性を向上させた。
4) 各FET及びドライブ回路は水冷フィンで冷却し、1MHzの高繰返し運転でのスイッチングロスによる素子の温度上昇を抑制し、安定な動作が得られるようにした。
5) 回路全体をバー配線による立体回路構成とし、低インダクタンス化にすることにより、250nsと言う非常に短い高電圧パルスの波形を波形歪の少ない矩形波パルスとした。

仕 様
定格出力電圧 ±2500V
定格出力電流 25A
出力パルス幅 (+)250ns、(-)250ns
繰返し周波数 1MHz
平均出力電力 31kW
運転モード 連続
外形寸法 550W×800D×700H(mm)
質量 125kg

高電圧パルスモジュレータ
1MHzで連続発生した高電圧パルス