研究・医療・産業用特殊電源
世界最高性能の加速器を支えるニチコンの特機技術
〜世界TOPレベルの高電圧・大電流・パルス制御技術〜
Bファクトリー加速器実験施設 (文部科学省高エネルギー加速器研究機構)
Bファクトリー加速器実験施設(茨城県つくば市)には数百台の当社の高性能電源が使用されています。
Bファクトリー加速器に先立つトリスタン計画においても、2MWのクライストロン用電源の高電圧部をはじめマグネット用電源を多数台納入しており、トリスタンからBファクトリーへの改造時には、新開発のマグネット用高精度電源、パルス電源等を合わせて約400台ご採用いただきました。
Bファクトリー加速器は、電子と陽電子を光の速度近くまで加速し衝突させることで、宇宙が物質だけで出来ている謎(反物質が宇宙に存在しない理由)を解明することを目的としています。
この実験では、衝突回数(ルミノシティと呼ばれ、電子と陽電子の単位時間あたり単位断面積での衝突確率を表す)を上げられるかが重要であり、決められた値に対して1/10万の精度で数年間の長期安定出力をもたらすことがその確率を高めます。
当社は長年蓄積してきた経験と最新の技術力を駆使して、これらの厳しい要件を満足する電源を開発納入してきましたが、これまで約4年間高い稼動率と安定した性能で実験結果の蓄積をもたらし、ルミノシティでも最高レベルを成就したことから、このBファクトリー加速器が世界一の性能を示し、少なからぬ貢献をしています。
本加速器が性能、蓄積実験データ量ともに世界最高性能記録を達成、実験施設の建設に協力した企業150社の中から特に貢献度の大きかった8社に高エネルギー加速器研究機構から感謝状が贈呈され、当社も受賞の栄誉に浴することができました。
右の写真は、加速器のビーム軌道を安定に保つための偏向用、収束用等のマグネット電源で、370台(総出力容量:7MW)納入しました。
この種の電源で世界で初めてスイッチング方式を採用しており、体積が従来比1/2、電源効率が20%アップ、安定度が1/10万の高精度と、小形、高効率、高精度の3拍子を誇っています。

SiCパワーデバイスを搭載した「高出力パルス電源」を共同開発
~SACLAでの2本の硬X線FELビームラインの同時高出力運転に貢献~
理化学研究所、高輝度光科学研究センターは、X線自由電子レーザー(XFEL:X-ray Free-Electron Laser)施設 SACLAで稼働している2本の硬X線FELビームラインについて、同時に、40ギガワットを超える高いレーザー出力で運転することに成功されました。
高出力運転のためには、キッカー電磁石をこれまでの約6倍の電圧で動作させる必要があり、当社はこのために必要となる高出力パルス電源を理化学研究所、高輝度光科学研究センターと共同で開発しました。次世代のパワー半導体デバイスである「SiC MOSFET」を利用することで、電力の損失が少なく、設定電流値からの偏差が0.001%精度という、高効率かつ高安定性を持つ電源を実現しました。
今までは利用者に提供可能なビームタイムの不足が課題となっていましたが、今後は複数ビームラインの高出力同時運転を生かした利用機会の増加による成果の拡充や、特色あるXFELの利用法の開拓を通したユニークな成果の創出などが期待されます。

SACLA(X-FEL)用超高精度高電圧充電器の開発
「国家基幹技術」に認定されている国家プロジェクト、「SACLA (X-FEL : X線自由電子レーザー) 計画」。物資を原子レベルの大きさ、かつ瞬時の動きを観察することができる「夢の光」として注目されています。この新しいX線利用施設によって、材料化学、プラズマ物理、宇宙物理、化学、構造生物学、生命化学などに優れた基礎科学の成果が期待され、核融合、触媒などを含む広い分野に大きな波及効果が予想されています。当社はSACLAを安定動作させるために0.01%の誤差範囲という極めて高い精度の高電圧充電器の開発に成功しました。
このSACLA(X-FEL)計画では、クライストロン用モジュレータ電源に、72台のニチコンの超高精度高電圧充電器と70台のモジュレータが使用されています。

出典:国立研究開発法人 理化学研究所

超高精度高電圧充電器(写真右、ラック内)
モジュレータ(写真左)
J-PARC(茨城県東海村/日本原子力研究開発機構)
大強度陽子加速器施設 J-PARC( Japan Proton Accelerator Research Complex )は、高エネルギー加速器研究機構(KEK)と日本原子力研究開発機構(JAEA)が共同で進める、世界最高クラスの大強度陽子ビームを生成する加速器と、その大強度陽子ビームを利用する実験施設で構成される最先端科学の研究施設です。
ニチコンは我が国の主要な加速器プロジェクトや、多くの研究機関、そして加速器メーカに優れた製品を納入し、高い評価を得てまいりました。J-PARCにおいても各種高精度電源の開発に取り組んでいます。

世界最大級の大型放射光施設「SPring-8」でもニチコンの技術が活躍
播磨科学公園都市にある世界最大級の大型放射光施設「SPring-8」は、世界最高性能の「放射光」を発生することができる大型の研究施設です。この施設にニチコンが開発した「電磁石用大電流安定化電源」「クライストロン用電源」をはじめいくつもの電源が導入されています。
放射光は生命科学や環境科学、医療や産業など広範な分野における最先端の研究に役立つ「科学の光」。例えば、半導体の露光や解析に利用されています。ニチコンは、高電圧・大電流制御技術を駆使し、ビッグプロジェクトの一翼を担っています。

国内最高800万Vの電子ビーム加速器のほか、
加速器用電磁石電源なども多数開発
数千万分の1秒という超短時間に、世界中の発電量にあたる約1兆ワットを超えるパルスパワーを発生させる800万Vの電子ビーム加速器。長岡技術科学大学にあるこの装置もニチコンの開発品です。
このほか、加速器用の電源も多数開発しており、文部科学省高エネルギー加速器研究機構が推進する宇宙生成(ビッグバン)の謎を解明しようとするプロジェクト「Bファクトリー実験」にも、加速器用電磁石電源を納入しました。また、2002年にノーベル物理学賞を受賞された小柴昌俊東京大学名誉教授のK2K実験に用いられている人工ニュートリノ発生にも貢献しています。

医療機関への展開
がんの新しい治療法として注目を集めている「粒子線治療」、元素の原子核を加速して患部に照射することで、病巣をピンポイントで破壊する。ここにも当社の高電圧大電流制御技術、大容量インバータ技術、直流安定化技術、高精度デジタル技術を駆使した「超高精度加速器用電源」が活躍しています。

ガンを切らずに治す
出典:名古屋陽子線治療センター

最先端の粒子線がん治療装置
出典:(株)ビードットメディカル
https://bdotmed.co.jp