車載用アルミ電解コンデンサの最新技術動向

自動車・車載関連分野では環境を意識したエコカーを全面に押し出すことで堅実な成長を維持してきた。その中でも電気自動車やハイブリッドカーは環境負荷が小さく、経済的であることから普及が進んでおり、インフラ環境も徐々に整ってきているため、さらに拡大していくことが予想される。近年では先進運転支援システム(ADAS)に代表されるような安全機能や自動運転機構を搭載した自動車の開発が進んでおり、それらの機能に不可欠なセンサー系を中心に高性能化が加速している。また快適な車内空間を確保するべく搭載部品の省スペース化が進んでおり、車載用コンデンサに対しては高温過酷環境への対応に加え、小形・高容量化が求められている。
今回、これらの要求に対応するアルミ電解コンデンサおよび導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサの最新技術動向について解説する。

■アルミ電解コンデンサについて
アルミ電解コンデンサは、主材料としてアルミニウムを使用しており、他のコンデンサに比べ単位体積当たりの静電容量が大きく、アルミニウム自体が金属材料の中でも安価に入手可能なことから、低コストで高容量のコンデンサが製造可能となる。アルミ電解コンデンサの誘電体は、高純度アルミニウム箔表面に形成された酸化皮膜(Al2O3)である。この酸化皮膜は比誘電率が高く、他の誘電体に比べ非常に薄く均一な層の形成が可能であることから、大きな静電容量を得るのに有利である。アルミ電解コンデンサの一般的な構造は陽極箔と陰極箔を対向させ、その間にセパレータを挟み円筒状に巻き取った素子に電解液を含浸し、アルミケースに挿入し封口材で封止する。コンデンサの静電容量は箔対向面積に比例するため、箔表面は粗面化(エッチング)し実効面積を拡大することで効率的に大きな静電容量を確保している。両極間に挟み込んでいるセパレータは絶縁物であり、電解液を含浸していない素子は僅かな静電容量しか示さない。これは箔表面の誘電体が有効に働かないためであり、電解液が真の陰極とも呼ばれている理由である。電解液特性はコンデンサの諸特性に深く関わるため、定格や温度、用途によって適切な組成の電解液を選択している。

■アルミ電解コンデンサ「UCV・UCHシリーズ」
近年は車載用途に限らずデジタル家電や情報通信分野においても機器の高機能化が急速に進行しており、さらなる小形化・高容量化のニーズが高まっている。当社では小形・高容量品としてUCLシリーズやUCMシリーズをラインアップし対応してきた。今回、製品単位体積当たりの静電容量が業界最高となる「UCVシリーズ」【写真1】を2015年4月に上市し、2017年10月より16V定格を拡充した。これまでUCLシリーズやUCMシリーズはエアバッグ制御用回路やパワースライドドア、ブロアモーター等に採用されているが、本製品の適用によりセット当たりの使用本数削減やさらなる高性能化に寄与することが可能である。本製品は薄手セパレータ、薄手高容量陰極箔の採用により収容効率を増大させるとともに、陽極箔の高容量化により、現行品に比べ1ランク小形化を実現している。サイズ体系はφ6.3×7.7L~φ10×10Lmm、定格電圧範囲16~35V、静電容量範囲は220~1500μF、カテゴリ温度-55~105℃である。耐久性は105℃ 2000時間、許容リプル電流値は600~1190mArms(at 105℃ 100kHz)である。

一方で、自動車・車載関連分野では快適な車内空間の確保や高効率化のため、エンジンルーム内やその周辺に電子回路を配置することが多くなっており、搭載部品には過酷な高温環境への対応が求められる。また、寒冷地など低温環境下での使用にも適した製品が求められており幅広い温度範囲へ対応する必要がある。加えて、長時間安定した製品特性を維持する必要があり、高信頼性化も求められる。特に製品の等価直列抵抗(ESR)が重要視されており、当社では設計段階でこのESRの変化が把握できるよう、耐久試験後低温ESR規定品をラインアップし対応してきたが、市場からは更なる小形化・低ESR化の要求があり、耐久試験後低温ESR規定品として業界最高レベルとなる「UCHシリーズ」【写真2】を開発、2017年10月より25V定格を拡充した。本シリーズの適用により、様々な車載要求に応えると共にセット機器の省電力・長寿命化に貢献できる。本製品は、低蒸散性低抵抗電解液の採用や内部仕様の最適化により、φ6.3×7.7Lmmにおいて現行品に比べ、耐久試験後の低温ESRの初期値に対する増加率を75%低減したことを特長としている。UCZシリーズから1ランク小形品でもあり、エンジン制御装置やDC-DCコンバータなど駆動周辺機器用途に採用が進んでいる。サイズ体系はφ6.3×7.7L~φ10×10Lmm、定格電圧範囲25~35V、静電容量範囲は47~560μF、カテゴリ温度は-40~125℃である。耐久性は125℃ 2000時間、許容リプル電流値は197~500mArms(at 125℃ 100kHz)である。


【写真1】低インピーダンス チップ形アルミ電解コンデンサ「UCVシリーズ」


【写真1】低インピーダンス チップ形アルミ電解コンデンサ「UCVシリーズ」

【写真2】 耐久試験後ESR規定チップ形アルミ電解コンデンサ「UCHシリーズ」

【写真2】 耐久試験後ESR規定チップ形アルミ電解コンデンサ「UCHシリーズ」




■導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ「GYA・GYBシリーズ」
前述のとおり、アルミ電解コンデンサには今まで以上に高温度対応、低抵抗化、高リプル対応の要望が高まっている。これらの要求に対応すべく、当社では125℃保証の導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ「GYAシリーズ」【写真3】を開発し、2017年4月より量産を開始している。さらに、産業機器、通信基地局、医療機器や民生機器等への幅広い要求に対応するために、105℃保証の導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ「GYBシリーズ」【写真4】を2018年4月から量産開始した。
導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサは、導電性高分子と電解液を融合したハイブリッド電解質を採用し、独自の導電性高分子形成技術を適用し、低ESR性能を実現した。この導電性高分子は、電子伝導を有することから高周波数および低温領域下でも特性変化が小さいことが特長であり、機器のさらなる高性能化に寄与できる。【表1】また、導電性高分子に適した電解液を開発することにより、導電性高分子の性能を損なうことなく電解液の特長である低漏れ電流性能を実現している。さらに、高温度環境下でも安定した導電性高分子を採用していることから、長寿命化が可能となる。以下にGYAシリーズおよびGYBシリーズの仕様について説明する。

GYAシリーズのサイズ体系はφ6.3×5.8L~φ10×10Lmm、定格電圧範囲は25~63V、静電容量範囲は10~330μF、カテゴリ温度は-55~125℃である。許容リプル電流値は700~2000mArms(at 125℃ 100kHz)であり、耐久性の保証は125℃ 4000時間(リプル重畳)である。GYBシリーズのサイズ体系、定格電圧範囲、静電容量範囲はGYAシリーズと同等である。カテゴリ温度は-55~105℃、許容リプル電流値はGYAシリーズに比較して約1.2~1.4倍の高リプル化となる1000~2500mArms(at 105℃ 100kHz)、耐久性保証は業界最高レベルとなる105℃10000時間(リプル重畳)である。105℃10000時間の長時間保証は、導電性高分子の成膜プロセスの最適化を行うことで実現した。なお、両シリーズ共にφ8×10L、φ10×10Lmmサイズにて耐振動構造対応(30G保証)も可能である。

今後、導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサの用途は、これまで以上に市場は拡大する方向に進むと考えられる。特に自動車市場は堅調に推移しており、自動運転やADAS等が普及することで自動車の電装化、高機能化はますます進んでいく。これらを考慮し、当社では導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサの高耐熱化、高容量化に着手している。高耐熱化はGYA・GYBシリーズで培った導電性高分子成膜技術を用い、高温環境下でも蒸散しにくい電解液を開発、採用することにより135℃保証の達成を見込んでいる。高容量化については各材料の薄手化および高容量箔の適用により達成させていく。また、家電、通信機器、産業機器等の民生市場への幅広いニーズに対応するため、ラインアップやサイズ拡充を進めていく予定である。  


【写真3】 導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ「GYAシリーズ」

【写真3】 導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ「GYAシリーズ」


【図2 充放電サイクル特性】

【写真4】 導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ「GYBシリーズ」



【表1】 導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサの周波数特性および温度特性

【表1】 導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサの周波数特性および温度特性


ニチコン株式会社
2018年8月23日付 電波新聞掲載

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