アルミ電解コンデンサの最新技術動向

●はじめに

 電子機器の小形化、薄形化、軽量化の進展を背景に、表面実装技術をベースとした高密度実装化が急速に進んでいる。電子部品においては一層の小形化・高周波化対応が求められると共に、環境問題への対応も欠かすことのできない課題となっている。

 アルミ電解コンデンサは、これらの要求に加えて高密度実装化、面実装化ニーズがいちだんと高まり、チップ化への対応が急務となっている。また、リード線タイプアルミ電解コンデンサ及び基板自立形アルミ電解コンデンサにおいても小形化はもちろんのこと、更なる性能の向上が求められている。加えて近年話題となっている環境対策も十分配慮していく必要がある。ここではアルミ電解コンデンサについて当社の製品を例に最近の技術動向を述べる。

●チップ型アルミ電解コンデンサ

 チップ形アルミ電解コンデンサの開発背景には、モバイルやネットワーク家電に代表されるPDA、セットトップ・ボックスなどのデジタル情報機器などのさらなる小形・高機能化への要求、また実装面積当たりの機能および性能に対する形態変化が始まっているという状況にある。表面実装技術(SMT)や表面実装部品(SMD)といったテクノロジーが、現在のエレクトロニクス機器の高性能化、小形化、薄形化を支えており、アルミ電解コンデンサのチップ化に拍車をかけている。チップ形アルミ電解コンデンサは、高耐熱の電解液と封口ゴムを採用したアルミ電解コンデンサのディスクリート品に、装着時の安定性と耐熱性を保護するために樹脂成形板(座板)を取り付けた構造になっており、これによってリフローはんだ付けが可能となった。この形状は今日のチップ形アルミ電解コンデンサの主流となっている。



 チップ品は当初、製品高さが6mmであったが、その後低背化が進み、4.5mm品が最低背品とされてきた。そこで当社では99年5月、業界最低背の3.95mmLMAXを実現した「ZRシリーズ」を開発した。更に昨年9月には高温度対応品として105℃対応の「ZGシリーズ」、両極性品の「ZEシリーズ」を新たにラインナップに加え、超低背チップ品の充実を図った。これら「ZR/ZG/ZEシリーズ」は、電極箔の強度を高めながら、エッチングの高倍率化を図り、新たに開発した高耐熱素子止めテープの採用、また耐熱性を向上させた封口ゴムや座板を採用することによって熱強度を上げた。更に「ZGシリーズ」は新規高安定性の電解液を採用することにより、105℃までの高温度対応としている。このような技術に加え、今日まで培ってきた極細スリッター技術や高精度素子巻き取り技術などを駆使することによって、製品高さ3.95mmMAXをラインナップした。

 チップ形アルミ電解コンデンサ「ZG/ZEシリーズ」の仕様を以下に述べる。「ZGシリーズ」の製品径はφ4、φ5、φ6.3mmで構成されており、いずれも製品高さを3.95mmLMAXとしている。耐久性は105℃、1000時間で、定格電圧範囲は6.3~50V、定格静電容量範囲は0.1μF~100μFまでをカバーする。「ZEシリーズ」も同サイズで構成されており、耐久性は85℃、1000時間、定格電圧範囲は6.3~50V、定格静電容量範囲は0.1μF~47μFまでをカバーする。両シリーズ共、エンボスキャリアテープを使用した従来と同様のテーピングにて供給する。

 一方当社は、最大定格電圧450V、最大容量10000μFの大形チップアルミ電解コンデンサ「UGシリーズ」「UJシリーズ」を業界に先駆けて開発し、量産化している。これらの製品はエンボスキャリアテーピング方式、トレー方式の2種類の供給方式に対応している。また製品定格表示確認の容易性を追求すると共に環境への配慮として、燃焼させるとダイオキシンが発生する可能性を指摘されているPVCスリーブに代えて、ラミネートケースを採用している。一方自動車電装部品及び高信頼性が要求される回路に使用される製品として耐久性125℃5000時間の「UHシリーズ」、両極性品で105℃対応の「UNシリーズ」を加え、大形チップのラインナップを強化している。

●リード線タイプアルミ電解コンデンサ

 リード線タイプアルミ電解コンデンサに求められる特性として、最近では小形化の他に高温度対応、高許容リプル対応、低インピーダンス化があげられる。



 まず高温度対応品については、近年のカーエレクトロニクス技術の進展と、ハイブリッドカーならびに電気自動車の台頭が背景にある。これまで車載用電子回路は車内に搭載されてきたが、エンジンルーム内に設置される様になり、高温度対応のコンデンサが要求されている。当社の「BTシリーズ」は125℃対応品として市場に受け入れられてきたが、更なる高温度対応要求に応えるべく新シリーズとして「BXシリーズ」を開発した。基本的な構造自体は「BTシリーズ」と変わらないものの、高温度に耐えうるため部材の総見直しを行っている。当社の長年の技術蓄積に基づいた高温での蒸散性が小さい電解液の採用、耐熱性を向上させた封口ゴム、エッチング倍率を上げながら強度を増したアルミ箔、弁膨張を抑制する為に硬度を上げ環境対応も考慮したラミネートケースなどを採用することで、更なる高温度化対応と高信頼性を同時に実現した。「BXシリーズ」の仕様を以下に示す。ケースサイズはφ10×12.5㎜L~φ18×40㎜Lの9サイズ、カテゴリ温度範囲は-55~+150℃、耐久性は150℃1000~2000時間を有している。定格電圧範囲は10~35V、定格静電容量範囲は1~4700μFをカバーしている。

 市場の動向を見るに、IT関連の市場が大きく躍動している。その牽引の一端をになっているのがモバイル市場と呼ばれるカテゴリであることは言うまでもない。持ち運びが容易なモバイル機器の市場拡大に伴い、モバイル機器に使用される電源も小形・薄形・軽量化が求められる様になり、搭載されるコンデンサにも小形・薄形化が求められると同時に、高許容リプル電流も同時に求められているが、この市場に向けて新シリーズ「PTシリーズ」を開発した。「PTシリーズ」は当社独自の技術で開発した高圧高容量化成箔、ならびに高耐圧低比抵抗電解液を採用した製品で、従来品比較20%の小形化と許容リプル電流の50%向上を具現化し、スイッチング電源及び電源アダプターの入力平滑用コンデンサとして最適な「小形と高許容リプル対応」を両立させた製品である。

 また、急速に進む機器のデジタル化に伴い、コンデンサの低インピーダンス化が求められている。当社はインピーダンス値を従来品比40%低減した「HDシリーズ」、更に70%低減した「HCシリーズ」を開発生産している。これらのシリーズにはエチレングリコール溶媒の電解液を使用している。同じリプルを許容する場合サイズの小形化が図れ、部品使用点数の削減も可能である。更に今回長寿命化を実現した「HEシリーズ」を開発した。「HEシリーズ」のケースサイズはφ5×11㎜L~φ18×40㎜L、最長10000時間の耐久性を有している。定格電圧範囲は6.3~100Vで、定格静電容量範囲は6.8~18000μFをカバーする。これらの製品はDC-DCコンバータや電源部分、さらにはパソコンやDVD等のデジタル機器部品への展開が見込まれる。

 機能性高分子アルミ固体電解コンデンサ「NAシリーズ」は、電解質にアルミ電解コンデンサで使用している電解液の約2000分の1の比抵抗を有する機能性高分子を採用したアルミ固体電解コンデンサである。低ESR、高許容リプル対応であることから、DC-DCコンバータなどの電源での採用が急増しており、今後一層の市場拡大が期待される。

●基板自立型アルミ電解コンデンサ

 IT革命の進展に伴い電子機器の小形・薄形・軽量化に拍車がかかっており、機器の一次側電源に使用されるアルミ電解コンデンサも更なる小形化が要求されている。当社はこうした市場のニーズに応え、「高倍率エッチング箔の開発」、「低比抵抗電解液の開発」「薄手高耐圧電解紙の採用」に加えて「高収容構造等の技術」を駆使し、当社従来品と比べ10~30%の小形化を実現した基板自立形アルミ電解コンデンサ85℃品「LNシリーズ」、105℃品「GNシリーズ」を開発した。同一定格でも2~3種類のサイズバリエーションを揃え、回路設計の選択度を高めると共に、スイッチング電源及び情報通信機器、デジタル家電はじめ幅広い分野での小形化に寄与出来る。



●地球環境問題

 地球環境問題が取り上げられている現在、ダイオキシン問題、鉛問題が大きくクローズアップされており、早急な対応を迫られている。当社では、これらの問題の重大性を早くから認識し、開発段階から取り組み、対応している。

(1)ダイオキシン問題
 ダイオキシンの発生を抑制する為には、発生源となる物質の削減とゴミ焼却炉の整備が重要である。通 常アルミ電解コンデンサは表示用として塩化ビニル(PVC)を使用しているが、PVCは焼却時にダイオキシンを発生させる可能性があるということを重視し、当社はチップ製品にナイロンラミネートケースを採用しPVCを全廃した。更にリード線タイプアルミ電解コンデンサに関しても、ラミネートケース及びポリエステルスリーブの対応によって、地球環境に優しい製品作りを推進している。

(2)鉛問題
 鉛問題もダイオキシン問題と同様に早急に解決しなければならない問題の一つである。廃棄された電子機器に使用されている鉛はんだ、鉛メッキから酸性雨により鉛が溶け出し、土壌、水質汚染を引き起こし生態系に深刻な影響を及ぼしている。鉛フリーに関しては、はんだメーカー、材料メーカー、セットメーカー、電子部品メーカー、関連メーカー、関連団体などが鉛フリー化に向けて研究開発に取り組んでいる。当社は、リード線のメッキ部分の鉛フリー化を目指し、鉛フリーはんだの進展状況を把握しながら、タイムリーに商品化できるよう様々な対応を図っている。

 迎えた新世紀は情報化時代にあって、デジタル機器・ネットワーク関連機器市場はさらに加速して拡大していくことが予想される。今後市場が要求する電子部品はさらなる小形化、高温度対応、高許容リプル対応、低インピーダンス化であることは間違いないが、当社もこのメガコンペティションの時代を勝ち抜く為、今後も市場のニーズに沿った商品開発を積極的に行い、ユーザーの期待に応えていく。

2001年1月9日  電波新聞掲載

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