アルミ電解コンデンサの最新技術動向

■はじめに

 電子機器の小形・薄形・軽量化、高周波デジタル化の進展はめざましく、特に携帯情報端末機器、パソコンや薄形(液晶、PDP)テレビなどの情報通信・デジタル家電機器において、機器の小形、薄形、軽量、高機能化に拍車がかかっている。この要求を可能にするキーテクノロジーが表面実装技術(SMT)であり、表面実装部品(SMD)であると云っても過言ではない。情報通信機器などの更なる小形高性能化の要求により、実装面積当たりの機能および性能の向上が求められている。パソコンを中心とした情報機器では、マザーボードなどに使用されるアルミ電解コンデンサには、いちだんの低インピーダンス化・長寿命化が求められている。

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低インピーダンスアルミ電解 コンデンサUUシリーズ(手前)とHVシリーズ

■低インピーダンス形アルミ電解コンデンサ「UUシリーズ」

 現在、電子機器の小形、薄形、高性能化を支えているテクノロジーのひとつに表面実装技術があり、このことがアルミ電解コンデンサのチップ化に大きく拍車をかけている。チップ形アルミ電解コンデンサの基本構造は、陽極箔と陰極箔とを電解紙を介して巻き取った素子に電解液を含浸させ、アルミケースに挿入して封口ゴムで封止した構造で、リフローはんだ付け対応のために高耐熱の電解液と封口ゴムを採用し、装着時の安定性と耐熱性保護のために樹脂成形板(座板)が取り付けられている。
この形状が今日のチップ形アルミ電解コンデンサの主流となっている。

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図.1 チップ形アルミ電解コンデンサ構造図

 電子機器の高周波化が進む中、アルミ電解コンデンサは、いちだんの低インピーダンス・低ESR化が求められている。当社はこれらの要求に対して50%のインピーダンス低減(当社現行品比)を実現したチップ形アルミ電解コンデンサ「UUシリーズ」を開発した。
  低インピーダンス化を実現するためには、コンデンサ部材を見直す必要があった。これまで低インピーダンス品として実績のあったアミジン系電解液の高電導度化には限界があるため、新たな電解液と電極箔を開発して低インピーダンス化を実現した。電解液については、高電導度と電極箔の劣化を抑え耐久性を向上させ、電極箔については酸化皮膜の安定性を向上させた。また封口ゴムに於いても硬度及び耐熱性を向上させた封口材を採用した。
「UUシリーズ」のケースサイズはφ4×6.8L㎜、φ5×6.8L㎜、φ6.3×6.8L㎜、φ8×12L㎜の4種類で、定格電圧は4~35V、静電容量は4.7~470μFをカバーする。

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UUシリーズ

 図2にインピーダンス-周波数特性を示す。6.3V/100μF(φ6.3×6.8L㎜)を例にとると、現行品(UDシリーズ)における100kHzのインピーダンス0.44Ωに対し、UUシリーズのインピーダンスは0.20Ωであり、約50%の低インピーダンス化を実現している。

 表1に「UDシリーズ」と「UUシリーズ」との比較を示す。6.3Vで450mArms(at105℃,100kHz)のリプル電流を許容するためには、UDシリーズでは470μF(φ8×10Lmm)が必要であるが、UUシリーズでは120μF(φ8×12Lmm)で対応可能となる。同様に、25Vで450mArms(at105℃,100kHz)のリプル電流を許容するためには、UDシリーズでは150μF(φ8×10Lmm)が必要であるが、UUシリーズでは47μF(φ8×12Lmm)で対応可能となる。

 表1に「UDシリーズ」と「UUシリーズ」との比較を示す。6.3Vで450mArms(at105℃,100kHz)のリプル電流を許容するためには、UDシリーズでは470μF(φ8×10Lmm)が必要であるが、UUシリーズでは120μF(φ8×12Lmm)で対応可能となる。同様に、25Vで450mArms(at105℃,100kHz)のリプル電流を許容するためには、UDシリーズでは150μF(φ8×10Lmm)が必要であるが、UUシリーズでは47μF(φ8×12Lmm)で対応可能となる。

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図.2 インピーダンス―周波数特性

表.1 現行品との比較

低インピーダンスリード形アルミ電解コンデンサ「HVシリーズ」

 チップ形アルミ電解コンデンサと同様に、リード線形アルミ電解コンデンサにも低インピーダンス化が求められている。当社は、昨秋、低インピーダンス、小形、長寿命を図った「HVシリーズ」を開発した。「HVシリーズ」は、高電導度電解液を使用するとともに、使用部材の最適化により、「HDシリーズ」より10%低インピーダンス化を実現しながら、小形、長寿命化を図った。105℃で最長6000時間の耐久性を保証し、定格電圧範囲6.3~35V、定格静電容量範囲47~8200μF、ケースサイズφ5×11Lmm~φ16×25Lmmをラインアップしている。

 表2に「HDシリーズ」と「HVシリーズ」との比較を示す。定格6.3V/2200μFでは、HDシリーズがφ10×25Lmmに対して、HVシリーズはφ10×20Lmmであり、耐久性も4000時間に対して6000時間と長寿命化を図っている。また、定格35V/220μFでは、HDシリーズがφ8×15Lmmに対して、HVシリーズはφ8×11.5Lmmであり、耐久性も3000時間に対して6000時間と長寿命化を図っている。

表2. 「HDシリーズ」と「HVシリーズ」との比較

 「HVシリーズ」は、低インピーダンスかつ小形・長寿命であることを特長としており、パソコンの電源回路や周辺機器のAC-DCコンバータやDC-DCコンバータなどに使用され始めている。なお、同シリーズは、鉛フリー、ポリ塩化ビニル(PVC)レスの環境対応製品である。

 情報化時代にあって、情報・通信・デジタル家電機器市場は今後も拡大していくことが予想される。市場が要求する電子部品はさらなる小形化、高温度対応、高許容リプル対応、低インピーダンス化であることは間違いないが、当社もこのメガコンペティションの時代を勝ち抜くため、引き続き市場のニーズに沿った製品開発を積極的に行い、ユーザーの期待に応えていく。

ニチコン株式会社 大野工場
技術部 技術課 笠原 崇

2004年1月29日付 電波新聞掲載

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