コンデンサおよび回路製品の最新技術動向

ニチコンは2019年3月期にコンデンサ事業とNECST(回路製品)事業でそれぞれ売上金額1,000億円、合計2,000億円を目指しており、その計画達成のため機構改革を行いコンデンサ事業本部と回路製品を統括するNECST事業本部を2013年11月21日に新設した。今回は、コンデンサ事業本部とNECST事業本部それぞれが取り組む最新の技術動向を紹介する。


【コンデンサの最新技術動向】

コンデンサ事業本部はアルミ電解コンデンサ事業とフィルムコンデンサ事業を統括している。コンデンサ事業分野においては、エレクトロニクス技術およびパワーエレクトロニクス技術の高度化に伴い機器の高効率化や小型化が進み、これに伴いコンデンサに対して「高電圧化」「高容量化」「低ESR化注1」「高耐熱化」「小形化」などの要求が更に求められている。
ここでは、チップ形アルミ電解コンデンサ、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサとフィルムコンデンサの最新技術動向について述べる。


■135℃低温ESR規定チップ形アルミ電解コンデンサ「CXシリーズ」

自動車の電装化が進む中、ECU注2や走行・制動にかかわる各種制御ユニットはエンジンルーム付近へ搭載されている。エンジンルーム内のような過酷な高温環境へ対応しつつ寒冷地での使用にも適したコンデンサとして、高信頼の耐久性試験後低温ESR規定品の要求が高まっている。こうした要求に応えた「CXシリーズ」は、過酷環境下にあるエンジン周辺部への搭載に適しており、先般、さらなる高耐電圧化(~50V)など製品体系を拡充し、その適用用途を拡大した。

【写真1】135℃低温ESR規定チップ形アルミ電解コンデンサ「CXシリーズ」

【写真1】135℃低温ESR規定チップ形アルミ電解コンデンサ「CXシリーズ」



■導電性高分子アルミ個体電解コンデンサ「CRシリーズ」

導電性高分子アルミ固体電解コンデンサは、パソコンを中心とした情報通信端末で広く採用されてきたが、「低ESR」「安定した温度特性」「長寿命」の特長が注目され、車載電装メーカーや産業機器メーカーでの採用も拡大しており、その要求に応えて、小形・大容量・長寿命125℃4000時間保証「CRシリーズ」を開発した。本製品は、更なる適用範囲の拡大および基板実装時の員数削減による基板の小型化に貢献する。

【写真2】導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ「CRシリーズ」

【写真2】導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ「CRシリーズ」



■フィルムコンデンサコンデンサ

風力発電、太陽光発電などで使用されるパワーコンディショナなどでは高電圧化、メンテナンスフリーが進んでおり、高信頼の直流フィルタ用コンデンサが強く求められている。こうしたニーズに応えた直流フィルタ用円筒形フィルムコンデンサ「ERシリーズ」【写真3】は、蒸着フィルムの薄膜化を実現することで従来製品より体積比40%の小形化、重量比30%の軽量化を図り、業界最小サイズ注3を実現した。

【写真3】直流フィルタ用円筒形フィルムコンデンサ「ERシリーズ」

【写真3】直流フィルタ用円筒形フィルムコンデンサ「ERシリーズ」


注1. ESR(Equivalent Series Resistance):等価直列抵抗
注2. ECU(Engine Control Unit):エンジンコントロールユニット
注3. 2013年9月当社調べ


【回路製品の最新技術動向】

回路製品を統括するNECST事業本部は、NECSTプロジェクトで推進してきた環境・エネルギービジネスに加えて、医療関連など成長市場に向けた各種電源のビジネス展開をその主たる事業としている。ここでは環境エネルギー分野の最新技術動向と加速器用電源など最先端の技術について紹介する。 


■スマートグリッドを実現するNECST製品群

当社は、加速器用電源で培った最先端技術をベースにリチウムイオン電池の高精度充放電電源を製品化しており、さらに直流系である蓄電池と交流系である電力系統を双方向で高速電力変換する技術を瞬低補償装置の開発により確立しており、NECST製品はそれを応用したものである。
家庭用蓄電システム「ホーム・パワー・ステーション」【写真4】は、太陽光発電とも組み合わせて使用することを前提に系統連系規定をクリアし、リチウムイオン電池の安全性と効率的運転ができるシステムで、蓄電システムとしてJET認証第1号取得して家庭に安心安全と経済性をもたらした。
V2Hシステム「EVパワー・ステーション」【写真5】は、世界で初めて電気自動車のリチウムイオン電池を活用して家庭に電気を供給するだけでなく、200V普通充電と比べて最大2倍のスピードで充電することを実現した製品である。
東日本大震災時に長期停電で避難所での生活が極めて厳しい状況になったことは記憶に新しいところである。その教訓を踏まえて避難所に自立した電源を備える国の予算が計上され、当社も避難所向けの分散型電源【写真6】を開発し、すでに多数納入している。

【写真4】ホーム・パワー・ステーション

【写真4】ホーム・パワー・ステーション

【写真5】 EVパワー・ステーション

【写真5】 EVパワー・ステーション

【写真6】 避難所向け分散型電源

【写真6】 避難所向け分散型電源



■加速器用電源の最先端ハイテク技術

当社は、40年前から加速器などの最先端設備用高機能電源を開発してきており、NECST製品群を支える先端技術の源流となっている。加速器は、電子や陽子を光の速さ近くまで加速するものであり、物質を構成する素粒子の研究や、加速した電子から放射される強力な放射光を用いて物質のミクロな状態を見ることができ、半導体や、医薬品の開発に利用されている。
加速器を用いたがん治療施設も全国に10か所以上設置され、手術をせずにがん細胞を死滅させる夢の医療技術として注目されている。
短期間にNECST事業本部の商品が矢継ぎ早に開発できた背景にこれらの技術蓄積が大きな働きをしている。これを図解したものを示す。【図1】

【図1】NECST製品開発の経緯

【図1】NECST製品開発の経緯



■まとめ

当社は、アルミ電解コンデンサ、フィルムコンデンサ、回路製品のコア事業について、パワーエレクトロニクスや環境エネルギー関連そして医療分野に注力し、新たな価値を創出する製品を開発することで、明るい未来社会づくりに貢献し、低炭素社会と安心な社会の実現を加速する一助とすべく取り組んでいる。



ニチコン株式会社
2014年1月10日付 電波新聞掲載

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