チップ形アルミ電解コンデンサの最新技術動向

■市場ニーズ

 近年、携帯電話、ノート型パソコン、PDAなどのIT関連機器や、プラズマディスプレイ、液晶TV、DVDプレーヤー/レコーダーなどのデジタル機器の市場が拡大してきた。そして、2003年12月から地上波デジタル放送の本放送が開始されるデジタル機器は、さらに需要が拡大するものと予想される。
 また、自動車でも、安全性、快適性を高めるエレクトロニクス化が進んでいる。
 これらの電子機器は、年々、小形・薄形・高性能化を図っており、搭載される電子部品にも小形・薄形・高性能化が求められている。そして、電子機器の小形・薄形化が進められる中、高さを制約する部品の一つであるチップ形アルミ電解コンデンサには、その低背化が強く求められている。また、車載用機器では、搭載する部品の耐振動性、耐熱性の向上が求められている。

■最近の新製品のトレンド

 チップ形アルミ電解コンデンサについて簡単に記述する。図1にリード線形アルミ電解コンデンサとチップ形アルミ電解コンデンサの概略図を示す。チップ形アルミ電解コンデンサは、リード線を接続した陽極箔と陰極箔とを電解紙を介して巻き取った素子に電解液を含浸した後、アルミケースに挿入して封口ゴムで封止し、樹脂成型座板を取り付け後リード端子を折り曲げて面実装構造としている。



 電子機器の小形・薄形化を実現するため、搭載される電子部品の小形・薄形化が要求されている。当社のチップ形アルミ電解コンデンサは、製品高さ6.0mmLから始まり、5.5mmL、5.0mmL、4.5mmL、3.95mmLと低背化を進めてきた。そして、更なる低背化の要望に応えて、製品高さ3.0mmL「ZDシリーズ」(図2)を市場投入している。チップ形アルミ電解コンデンサの低背化を図3に示す。「ZDシリーズ」は、製品高さ3.0mmLというチップ形アルミ電解コンデンサでは驚異的な低背化を達成しているが、電極箔の細幅化、封口ゴム、樹脂成型座板の薄形化等材料開発技術力と、糸のような極細電極箔を巻き取る高精度巻取機、薄い封口ゴム・樹脂成型座板を使用可能な組立機等設備開発技術力によって生み出された最新のチップ形アルミ電解コンデンサである。



 エレクトロニクス化が進む自動車の車載用機器に搭載される電子部品は、高い耐振動性が要求されている。チップ形アルミ電解コンデンサは、一般的に他の電子部品より高い位置に重心が存在するため、振動に弱い傾向があった。当社は、コンデンサ本体を樹脂成型座板の側壁で固定する構造(図4)とした耐振動性向上チップ形アルミ電解コンデンサを開発している。また、これまで車内に設置されていた車載用機器がエンジンルーム内へ移動され、高い耐熱性が要求されている。当社は、高耐熱部材を使用することで125℃保証品「UBシリーズ」「UHシリーズ」をラインアップしているが、さらに高耐熱部材を使用し、150℃保証品の開発を進めている。以上のように、車載用機器向けのチップ形アルミ電解コンデンサは、耐振動性、耐熱性の向上がキーテクノロジとなる。
 一方、地球環境汚染が問題となり、特に、鉛、ダイオキシン問題が大きく取り上げられている。当社はこれら環境問題の重要性を早くから認識し、鉛フリー、脱PVC(ポリ塩化ビニル)を図った製品の開発に取り組み、“ジオキャップ”製品としてラインアップし、地球環境に優しい製品作りを推進している。端子の鉛フリー化は、端子メッキの材質を錫100%または錫-ビスマスに変更している。また、現在の鉛フリーはんだは、鉛入りはんだより融点が高くなるため、リフロー温度が高くなっている。このため環境対応チップ形アルミ電解コンデンサは、端子メッキの材質を変更するだけでなく、鉛フリーはんだのリフロー温度に耐えられるよう、電解液、封口ゴム等材料の耐熱性も向上させている。そして、燃焼によりダイオキシン発生の恐れがあるPVCスリーブに替えて、チップ形アルミ電解コンデンサはナイロンラミネートケースを、リード形アルミ電解コンデンサはPET(ポリエチレンテレフタレート)スリーブへの移行を進めている。



■製品の課題

 先に紹介した「ZDシリーズ」で、製品高さ3.0mmLを実現しているが、更なる低背化のためには、アルミ電解コンデンサの主流である巻回形素子構造に限らず、新たな構造についても検討を進めている。また、低背化だけでなく、小形大容量、高性能を実現するために、アルミ電解コンデンサの主材料である電極箔、電解液の開発が重要である。

■技術展望

 ユビキタスネットワーク社会の広がりとともに、家電機器は、デジタル化、ネットワーク化が進み、情報通信の機能を搭載するようになる。また、自動車は、更にエレクトロニクス化が進み、周囲情報把握のカーナビゲーションに代表されるITS関連装置、車内シアターシステム、走行の安全性を高める走行制御装置、自動操縦システム等のさまざまな電子機器が搭載されるようになる。当社は、今後も小形・薄形・高容量、耐振動性、耐熱性等の特性向上に取り組み、デジタル情報家電分野、車載用機器分野を中心に、市場の要求にタイムリーな製品を投入していく。

ニチコン株式会社 大野工場
技術部 開発課 商品開発係 黒木 康王

2003年8月21日付 電波新聞掲載

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