昨今、海外などでは生産自動化を目的にFA機器やロボットの導入が急増している。特に中国では人手不足などにより工場の自動化や省人化に伴う投資が活発化している。これらの装置には指示した位置や速度に追従させる制御を行うサーボシステムが不可欠であり、FA機器、半導体製造装置、マウンタ、産業用ロボットなどの生産設備に組み込み用いられる。使用される部品には小形化、高耐電圧化、長寿命化、充放電耐久性能が求められる。ロボット用など産業機器分野に向けたアルミ電解コンデンサの最新技術動向について解説する。
■基板自立形アルミ電解コンデンサ「LGNシリーズ」
「LGNシリーズ」【写真1】は、パワーエレクトロニクス用高電圧インバータ回路等の各種産業機器用を主用途とする105℃保証 小形化品 基板自立形アルミ電解コンデンサである。産業機器分野の高効率化、省エネルギー化に伴い、システムの高電圧化が進められている中、インバータ電源等の制御回路に使用するアルミ電解コンデンサにおいては、高耐電圧化の要求が増加している。特に太陽光発電用や風力発電用など、再生可能エネルギー関連分野においては強い要求がある。「LGNシリーズ」はこれまで500V定格までのラインアップとなっていたが、業界最高である600V定格を追加しラインアップを充実させ、エネルギーの効率運用が重要視されるパワーエレクトロニクス装置への最適な仕様として提案をおこなっている。「LGNシリーズ」600V定格は、高耐電圧酸化皮膜を擁する高信頼電極箔の他、長期安定性があり高電圧での皮膜修復能力を高めた電解液、および高耐電圧電解紙を採用することで、業界最高電圧を実現した。特に電解液については、組成の最適化をおこない約20~30%の高耐電圧化を図り、105℃ 600Vの高電圧に耐える電解液を開発した。システムの要求電圧に対応するために、複数個のアルミ電解コンデンサを直列接続して使用する場合などでは員数の削減が可能となる。例えば電圧1200Vに対しては400V品の場合は3直列が必要であったが、新開発の600V品では2直列での対応が可能となり、省スペース化を図った回路設計に最適となる。
■基板自立形アルミ電解コンデンサ「LGMシリーズ」
「LGMシリーズ」【写真2】は、パワーエレクトロニクス用インバータ回路、スイッチング電源回路等の各種産業機器用を主用途とする105℃ 2000時間保証 超小形化品 基板自立形アルミ電解コンデンサである。各種産業機器において省力化、省資源化への配慮からセットの小型化が進んでいる中、搭載される部品に対しても小形化の要求が増加しており、これらの要求に対応するため、従来のLGLシリーズをさらに小形化した「LGMシリーズ」をラインアップした。「LGMシリーズ」は、高容量電極箔の他、耐久性に優れる電解液および電解紙を採用することで、製品の小形化を実現した。この結果、従来のLGLシリーズに比べて最大で16%(体積比)の小形化を達成し、省スペース化を図った回路設計に最適なアルミ電解コンデンサとして提供している。
製品サイズ比較
■ネジ端子形アルミ電解コンデンサ「LNUシリーズ」
「LNUシリーズ」【写真3】は105℃保証 高耐電圧小形化品 ネジ端子形アルミ電解コンデンサである。開発ポイントとしては、高耐電圧酸化皮膜を擁する電極箔の採用、長期安定性があり高電圧下での酸化皮膜修復能力を高めた電解液の採用、高耐電圧でありながら低密度な電解紙の採用、放熱性を高めた構造の採用、によりネジ端子形105℃保証標準品である「LNTシリーズ」 に対して、高耐電圧化(定格電圧:525V)・長寿命化(5000時間保証)を実現した。同時に小形化も実現しており、定格電圧500V品で比較すると約20~30%の小形化となり、機器の小型化・軽量化にも貢献する。また、負荷変動の激しい産業機器用途において高い評価を得ている高速充放電対応技術も取り入れており、短時間で急激な充放電を繰り返すACサーボモータなどの用途にも対応可能となっている。標準品よりも定格電圧を高めたことにより、入力電圧が変動するような電源電圧事情の悪い地域向けの電源平滑用として幅広く活用できることや、システムの要求電圧に対応するために、複数個のアルミ電解コンデンサを直列接続して使用する場合などでは員数の削減が可能となり、サイズ・コストを抑えた回路設計に最適である。
当社は、アルミ電解コンデンサにおいて豊富なラインアップを持ち、それぞれの特長を活かし、さまざまな分野のお客さまからの要求仕様にワンストップで開発、生産対応することができ、好評を得ている。今後もお客さまの期待に応えるため、新製品の開発を進めていく。
【写真1】基板自立形アルミ電解コンデンサ「LGNシリーズ」
【写真2】基板自立形アルミ電解コンデンサ「LGMシリーズ」
【写真3】ネジ端子形アルミ電解コンデンサ「LNUシリーズ」
ニチコン株式会社
2018年1月10日付 電波新聞掲載