大形アルミ電解コンデンサの最新技術動向

大形アルミ電解コンデンサの重点市場分野としては、「白物家電・産業用インバータ機器分野」、「自動車・車両関連機器分野」、「エネルギー・環境・医療機器分野」、「情報通信機器分野」 の大きく分けて4分野である。それぞれの市場ニーズに合わせた性能の大形アルミ電解コンデンサの開発が必要となり、現在求められる大形アルミ電解コンデンサの重要要素技術としては、1)小形化・低背化、2)高リプル化、3)高耐電圧化、4)高速充放電対応となる。【図1】

【図1】 大形アルミ電解コンデンサの要素技術

【図1】 大形アルミ電解コンデンサの要素技術



■小型化・低背化

機器の小形化や省スペース化に伴い、大形アルミ電解コンデンサにも小形化・低背化が求められている。小形化・低背化の開発ポイントとして、最新のエッチング技術により電極箔の実効表面積を拡大し、単位面積あたりの静電容量を増加させ、使用する箔面の量を低減することで製品を小形化している。また、電解紙は材料繊維構造を見直すことで耐電圧特性を向上しその分を薄手化することで、収容静電容量を増加させている。更に、構成部材および構造の見直しも合わせて電極箔の収容率を向上し、これら技術を融合させて小形化を実現している。


高リプル化

機器の高性能化に伴い電流負荷が大きくなるため、大形アルミ電解コンデンサには高リプル化が求められている。高リプル化の開発ポイントとして、従来のネジ端子形アルミ電解コンデンサの素子固定方法は熱可塑性樹脂などの固定材を使用していたが、リブ構造にて素子を固定するコンパウンドレス構造を採用することで、放熱効率が向上したため、リプル電流による素子温度上昇の低減が可能となった。また、従来は繊維径が比較的大きい電解紙が一般的だったが、繊維径が細く低密度の電解紙を採用することによって、低ESR化が可能となりコンデンサの発熱を低減した。【図2】

【図2】高リプル化への取り組み

【図2】高リプル化への取り組み


■高耐電圧化

産業機器分野などの高効率化・省エネルギー化に伴い、システムの高電圧化が進められている中、大形アルミ電解コンデンサにも高耐電圧化が求められている。高耐電圧化の開発ポイントとして、高電圧下でも高い信頼性を有する電極箔の開発をおこなっている。また、薬品メーカとの新規電解質の開発により、熱分解しにくく(耐熱性)、高耐電圧性を向上させた電解液を開発している。


■高速充放電対応

汎用インバータやサーボアンプでは、使用する装置の高速化・高性能化により急峻な電圧変動が発生する。この時充放電(特に放電時)によって電解液が局部的にストレスを受け、耐電圧低下を起こし、最終的には短絡不具合に至ることがある。この要因として、大形アルミ電解コンデンサに急峻で大きな電位差の充放電が繰り返されると、コンデンサ素子内部の陰極側引き出しリードタブ上の電解液が耐電圧低下するメカニズムが知られている。当社では特許技術である保護箔構造【図3】を採用することにより、このメカニズムを根本的に解消している。
この技術は、パワーエレクトロニクス産業機器のインバータ化に伴い各種電源やサーボアンプの他、インバータエアコンなど負荷が厳しく、高い信頼性が求められる用途に向けた不可欠な性能として、その重要性が高まっている。

【図3】当社特許技術「保護箔構造」

【図3】当社特許技術「保護箔構造」


市場ニーズに対応した新製品として、(1)基板自立形アルミ電解コンデンサ 超小形品 (2)基板自立形アルミ電解コンデンサ 定格電圧600V品 (3)ネジ端子形アルミ電解コンデンサ 小形・高リプル品LNUを開発している。


(1)基板自立形アルミ電解コンデンサ

超小形品 基板自立形アルミ電解コンデンサ105℃保証品の当社最小シリーズであるLGLをさらに1ランク小形化した超小形品を開発中である。開発ポイントとして、高容量・高信頼性電極箔の開発、電解紙の薄手化等による収容静電容量の向上により、LGLから更なる小形化を図っている。LGLと比べ、最大で20%以上の小形化となり業界最小サイズとなる。定格450V/560μFで比較するとLGLのφ35×40Lに対し開発品はφ35×35Lとなる。【図4】

【図4】当社シリーズのサイズ比較

【図4】当社シリーズのサイズ比較


(2)基板自立形アルミ電解コンデンサ

定格電圧600V品 基板自立形アルミ電解コンデンサ105℃保証品の当社最高電圧品はLGN・LGXの定格電圧500Vになるが、基板自立形コンデンサ105℃保証品では業界最高となる定格電圧600Vの高電圧品を開発中である。開発ポイントとして、高耐圧・高信頼性電極箔の採用、高耐電圧・高耐熱性電解液を採用し、従来の定格500V品から高電圧化を図っている。


(3)ネジ端子形アルミ電解コンデンサ

小形・高リプル品LNU LNUはネジ端子形アルミ電解コンデンサ105℃保証の小形・高リプル品であり、開発ポイントとして、①高耐電圧酸化皮膜を擁する電極箔の採用、②長期安定性があり高電圧下での酸化皮膜修復能力を高めた電解液の採用、③高耐電圧でありながら低密度な電解紙の採用、④放熱性を高めた構造の採用、によりネジ端子形105℃保証標準品であるLNT に対して、高耐電圧化(定格電圧:525V)・長寿命化(5000時間保証)を実現した。同時に小形化も実現しており、定格電圧500V品で比較すると約20~30%の小形化となり、機器の小型化・軽量化にも貢献する。また、負荷変動の激しい産業機器用途において高い評価を得ている高速充放電対応技術も取り入れており、短時間で急激な充放電を繰り返すサーボアンプなどの用途に最適製品である。【図5】

【図5】ネジ端子形アルミ電解コンデンサ「LNU」

【図5】ネジ端子形アルミ電解コンデンサ「LNU」


パワエレ用途を中心に電源平滑用のコンデンサは今後もアルミ電解コンデンサが主軸に推移していくと考えられる。しかしながら次世代パワー半導体の開発が進められる中でさらに高耐熱、高耐電圧化、低抵抗、小形化にニーズが高まってきている。 弊社は電極箔、電解液などの基本材料および新素材の開発部隊をグループ内におき、市場ニーズを捉えた新製品の開発をおこなっており、今後もお客様に満足いただける商品を提案してまいります。

ニチコン株式会社
2015年7月1日付 電波新聞掲載

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