自動車電装用アルミ電解コンデンサと駆動用フィルムコンデンサの最新技術動向

1.自動車電装用アルミ電解コンデンサの最新技術動向

近年、自動車の省エネに対する社会的要求及び環境への配慮が強まり、これらの要求を満たすためには、自動車の各機構を効率よく稼働させる電子制御が重要になる。従って、自動車に電子制御機器を組み込むこと、すなわち自動車の電装化は、これからも益々進み、電子部品においても自動車電装用としての仕様が要求されるようになる。
ここでは当社製品を例に自動車電装用アルミ電解コンデンサおよび導電性高分子アルミ固体電解コンデンサの最新技術動向を述べる。


■アルミ電解コンデンサの最新技術動向

アルミ電解コンデンサは、体積当たりの静電容量が他のコンデンサよりも大きく、主材料となるアルミニウムは金属材料中でも比較的安価であり、あらゆる電子機器に搭載されている汎用的な電子部品である。自動車分野に関しては、ECU(Engine Control Unit)や走行・制御にかかわるような各種制御ユニットにアルミ電解コンデンサは使用されており、これら制御ユニットはエンジンルーム付近に搭載されている。エンジンルーム内のような過酷な高温環境へ対応しつつ寒冷地での使用にも適したコンデンサの要求に応えるべく、業界初となる135℃での耐久性および低温ESR(Equivalent Series Resistance)を規定したシリーズとして『UCX』をラインアップしている。この『UCX』については、高温度環境下での安定性を向上した電解液の採用、高信頼性封口材の採用、高倍率陽極箔の採用、薄手化した電解紙の採用、製品構造の最適化により耐久性は135℃2000時間を保証している。サイズ体系はΦ6.3×10L~Φ18×21.5Lの8サイズで構成しており、定格電圧範囲は10~50V、定格電圧は47~3300µFをカバーする。


■導電性高分子アルミ個体電解コンデンサの最新技術動向

導電性高分子アルミ固体電解コンデンサは、パソコンを中心とした情報通信端末で広く採用されてきたが、近年は「低ESR」、「安定した温度特性」、「長寿命」の特長が注目され、車載電装メーカーや産業機器メーカーでの採用が拡大している。車載用途への展開には、高温度化対応が必須であり、当社は125℃品『PCX』をラインアップしているが、新たに『PCR』を加えた。このシリーズは現行の『PCX』より小形・大容量・長寿命125℃4000時間保証を実現している。『PCR』の開発にあたって、現行の『PCX』をベースとし、高耐電圧化技術を高め、導電性高分子形成方法、部材構成、材料設計の最適化を図り、小形・大容量化を図っている。また、車載用途は、耐振動性も求められるので、耐振動品も個別でラインアップし対応している。車載での使用用途は多様化し、更なる高温度化要求に対応すべく現在135℃対応品の開発を進めている。
以上、最新の技術動向であるが、当社アルミ電解コンデンサ及び導電性高分子アルミ固体電解コンデンサは自動車電装メーカーの更なる要求に応えるべく、現状に留まらず新しい製品の開発を進めている。

【写真1】135℃低温ESR規定チップ形アルミ電解コンデンサ『UCX』

【写真1】135℃低温ESR規定チップ形
アルミ電解コンデンサ『UCX』

【写真2】導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ『PCR』

【写真2】導電性高分子アルミ固体
電解コンデンサ『PCR』



2.駆動用フィルムコンデンサの最新技術動向

近年、ハイブリットカーおよび電気自動車用途において、

  • ① モータ駆動システムの高出力および高効率化を実現するための高電圧化
  • ② 車両の燃費向上として軽量化を実現するための小形化


が求められている。その駆動システムのインバータにおいて、直流電圧を平滑化する目的で平滑用コンデンサが必要とされるが、従来は大容量で安価なアルミ電解コンデンサが採用されていた。
しかし、コンデンサ用誘電体フィルムの技術革新や薄膜化が進展し、高耐電圧、低損失、高リプル電流、長寿命といった優れた電気特性を有するフィルムコンデンサの仕様見直しが進み今日に至っている。
今後のハイブリッドカーおよび電気自動車の普及・伸長に伴い、システムの低コスト化・小形化が不可欠とされている中、フィルムコンデンサにおいても、更なる小形化、高リプル電流対応、高温度化といった性能改善が要求されており、誘電体フィルムの薄膜化による小形化・蒸着技術開発による高耐電圧化、長寿命化・ESR低減による高リプル電流対応・構成部材の材料開発による信頼性向上最適構造設計による放熱性向上といったフィルムコンデンサの開発が必要となっている。

【写真3】ハイブリッドカー用フィルムコンデンサ

【写真3】ハイブリッドカー用
フィルムコンデンサ


■フィルムコンデンサの特長

フィルムコンデンサは誘電体として厚さ数µmのプラスチックフィルムを用いたもので、ハイブリッドカーおよび電気自動車用途では主としてポリプロピレンフィルムに金属を蒸着して内部電極とする蒸着金属タイプ(メタライズドフィルム)が使用されており、下記に示すような優れた電気的特性、安全性、高信頼性が特長である。

  1. 温度変化に対しても安定した静電容量特性
  2. 耐電圧性能に優れ、高電圧用途に最適
  3. 低損失のため、製品の自己発熱を抑制し省エネルギー化が可能
  4. シャープな高周波特性を示し、フィルタ効果に優れる
  5. リプル電流耐量が高く、単位体積あたりの電流密度が大きく取れる
  6. 自己回復機能(セルフヒーリング)を有し、安全性に優れる
  7. 高温環境下で10年以上メンテナンスフリー


従来、ポリプロピレンフィルムを使用したフィルムコンデンサは電気的特性に優れる反面、小形化が困難で、単位体積あたりの静電容量が得にくいことから、一部の用途に限られて使用されてきたが、現在ではフィルムの薄膜化、蒸着技術の向上により、ハイブリッドカーおよび電気自動車用途において、フィルムコンデンサの需要が急速に高まっている。


■フィルムコンデンサの最新技術動向

誘電体フィルムの薄膜化
フィルムの厚みがフィルムコンデンサの体積を決めるため、フィルム厚みが1/2になれば同容量で体積は1/4となる。ポリプロピレンフィルムの薄膜化は、2.5µmまで薄くなり、更にそれ以下の厚さについて開発を進めている。


蒸着技術(蒸着パターン)
フィルム厚みの薄膜化に伴い耐電圧も向上させる必要がある。そのため、蒸着する金属にパターンを形成するが、小セグメント(領域)の模様にヒューズ(保安機構)の機能を持たせている。求められる性能に応じて蒸着パターンの模様について、開発しており高耐電圧化、長寿命化を図っている。


フィルム厚みの薄膜化に伴い耐電圧も向上させる必要がある。そのため、蒸着する金属にパターンを形成するが、小セグメント(領域)の模様にヒューズ(保安機構)の機能を持たせている。求められる性能に応じて蒸着パターンの模様について、開発しており高耐電圧化、長寿命化を図っている。

【図1】蒸着パターン

【図1】蒸着パターン



高リプル電流の対応
ポリプロピレンフィルムも低損失の材料であるが、蒸着パターンで形成するヒューズ自体が抵抗体となるため、高リプル電流が流れると発熱が増加する。よって、高耐電圧化と高リプル電流を両立するための蒸着パターンの模様を開発するとともに、蒸着する金属の膜厚も制御して、高リプル電流に対応している。

ニチコン株式会社
2014年7月1日付 電波新聞掲載

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