超低背3.95mmMAXチップアルミ電解コンデンサの技術動向

 IT・デジタル関連機器の発展により、電子機器の小形化、低背化、軽量化の進展はめざましいものがあるが、これらを可能としたキーテクノロジーとして表面実装をベースとした高密度実装技術が挙げられる。
 最近、特に表面実装技術の発展により電子部品に対してもさらなる小形化、低背化と共に環境問題に対応した製品が求められている。

 こうした中、アルミ電解コンデンサにおいては、さらなる製品・技術開発が必要となっている。ここではチップ形アルミ電解コンデンサについて当社の製品を例に最近の技術動向を述べる。

●開発の経緯

 チップ形アルミ電解コンデンサの低背化を実現するためには電極箔の細幅化による素子及び封口材の薄形化が不可欠である。特に今回開発した高さ3.95mmMAX品については、電極箔巾と封口材の厚みの組み合わせが重要なポイントとなっている。

 3.95mmMAX品は、①電極箔の高容量化、②封口材の高耐熱化、③設備の高精度化の開発・改良に依存する所が大きい。

①電極箔の高容量化
 電極箔を細幅化して素子を薄形化した場合、製品全体に占める電極箔の収容体積が小さくなり、高容量化が難しくなる。従って、単位面積あたりの容量が大きい高容量電極箔が必要となる。そこで電極箔のエッチング、化成方法を工夫することにより従来に対して約20%UPの高容量電極箔を採用した。

②封口材の高耐熱化
 封口材を薄形化することは機密性、封口部強度を低下させる要因となり基本的に好ましくない。この問題を解決するために封口材の硬度及び耐熱性を向上した封口材を採用することで薄形化を実現した。この封口材は従来に比べて約25%薄形化している。

③ 設備の高精度化
極細電極箔のスリット加工に始まり、素子巻き取り、加締めに至る一連の組立加工において、これら高精度な専用設備と、それを維持する生産技術力とによって製品化を実現した。
 電極箔の極細幅化により必要となってくる極細幅で、かつ長尺な電極箔を裁断するスリット機、高精度の巻き取り機ならびに薄形の封口材を加締める組立機。これら一連の新規設備を導入することにより薄形化を可能にした。



 チップ品は開発当初、製品高さが6mmであったが、その後低背化が進み、4.5mm品が最低背品とされてきた。そこで当社は、99年5月、業界最低背の3.95mmLMAXを実現した「ZRシリーズ」を開発した。更に昨年9月には高温度対応の105℃品「ZGシリーズ」と両極性品「ZEシリーズ」を新たに加え、超低背チップ品のラインナップを強化した。「ZR/ZG/ZEシリーズ」は、電極箔の強度を高めながら、エッチングの高倍率化を図り、新たに開発した高耐熱素子止めテープの採用、また耐熱性を向上させた封口ゴムや座板を採用することによって熱強度を上げた。更に「ZGシリーズ」は新規高安定性の電解液を採用することにより、105℃までの高温度対応としている。このような技術に加え、今日まで培ってきた極細スリッター技術や高精度素子巻き取り技術などを駆使することによって、製品高さ3.95mmMAXをラインナップした。

 チップ形アルミ電解コンデンサ「ZR/ZG/ZEシリーズ」の仕様を以下に述べる。

「ZRシリーズ」の製品径はφ4、φ5、φ6.3mmで構成されており、いずれも製品高さを3.95mmLMAXとしている。耐久性は85℃、1000時間で定格電圧範囲は4~50V、定格静電容量範囲は0.1μF~220μFまでをカバーする。
「ZGシリーズ」も同サイズで、耐久性は105℃、1000時間で、定格電圧範囲は6.3~50V、定格静電容量範囲は0.1μF~100μFまでをカバーする。「ZEシリーズ」も同サイズで、耐久性は85℃、1000時間、定格電圧範囲は6.3~50V、定格静電容量範囲は0.1μF~47μFまでをカバーする。これら3シリーズは共にエンボスキャリアテープを使用した従来と同様のテーピングにて、特に低背化ニーズの高いノートパソコンとその周辺機器、情報通信機器等の市場向けに供給していく。



●環境問題への取り組み

 地球環境問題が取り上げられている現在、ダイオキシン問題、鉛問題が大きくクローズアップされており、早急な対応を迫られている。当社は、これら環境問題の重要性を早くから認識し、開発段階から取り組み、対応している。

①ダイオキシン問題
 ダイオキシンの発生を抑制する為には、発生源となる物質の削減とゴミ焼却炉の整備が重要である。通常アルミ電解コンデンサは表示用として塩化ビニル(PVC)を使用しているが、PVCは焼却時にダイオキシンを発生させる可能性があることを重視し、当社はチップ製品にナイロンラミネートケースを採用しPVCを全廃、地球環境に優しい製品作りを推進している。

②鉛問題
 鉛問題もダイオキシン問題と同様に早急に解決しなければならない問題の一つである。廃棄された電子機器に使用されている鉛はんだ、鉛メッキから酸性雨により鉛が溶け出し、土壌、水質汚染を引き起こし生態系に深刻な影響を及ぼしている。鉛フリーに関しては、材料メーカー、セットメーカー、電子部品メーカー、関連団体などが鉛フリー化に向けて研究開発に取り組んでいる。当社は、リード線のメッキ部分、座板端子の鉛フリー化を目指し、鉛フリーはんだの進展状況を把握しながら、タイムリーに商品化できるよう様々な対応を図っている。

今後情報通信機器・ネットワーク関連市場は更に拡大することが予想され、より小形で高性能である製品が求められる。また電子機器の使用条件もさらに過酷になり、耐久性、耐高温・耐振動対策等の要求も高まってくるだろう。さらに環境に対する取り組みは社会的要求となっており、さまざまな市場ニーズに沿った商品作りをタイムリーに行うことが必要となる。



2001年1月25日  電波新聞掲載

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