TCFD提言に基づく情報開示

当社グループは気候関連財務情報開示タスクフォース(以下TCFD)の提言に賛同し、将来の気候変動に関連する事象を経営リスクとして捉えて対応すると同時に、新たな機会も見いだし、企業戦略へ生かすことにより持続可能な社会の実現に貢献してまいります。また、TCFD提言に基づき、気候変動が事業に及ぼすリスクと機会の分析を進め、ガバナンス、戦略、リスクマネジメント、指標と目標に関する情報開示に取り組んでいきます。

ガバナンス

当社は1997年12月にニチコングループ環境憲章を制定し、経営理念として、価値ある製品の創造を通じて明るい未来社会づくりに貢献するとともに、より良い地球環境の実現に努めてまいりました。中期成長目標では、サステナビリティ方針に基づき気候変動への対応を重要課題の一つとして設定し、取締役会において低炭素社会の実現に向けた事業機会の獲得やESG経営の構築と推進について対応方針や施策を決定しています。

また、これらの推進体制として、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置し、同推進委員会内に環境・エネルギー委員会を設け、関連部門の責任者がメンバーとなり、横断的に係る体制としています。

戦略

当社の主要事業であるコンデンサ事業およびNECST事業について、気候変動が及ぼすリスクと機会について検討を行いました。リスクと機会は、当社事業を取り巻く環境を整理し、ステークホルダーや当社グループにとっての重要性を考慮した上で、事業活動への影響を「大」「中」「小」の3段階で評価しています。

大分類 項目 リスク/機会 影響 影響度
政策規制 炭素価格 リスク 炭素税(炭素価格)の導入により、アルミ原箔や電気代、薬品関係など、アルミ電解コンデンサの原材料調達コスト増加につながる。
機会 炭素排出を抑えるために、再エネ導入の設備投資が加速する。供給不安定な再エネを効果的に利活用するために蓄電設備の導入が促進され、設備に使用されるアルミ電解コンデンサ、フィルムコンデンサの需要も増加する。
機会 内燃機関車両から電気自動車への切り替えが進み、フィルムコンデンサ、急速充電器、V2H、アルミ電解コンデンサのビジネス機会が拡大する。
再エネ補助金 機会 補助金交付などの政策によって再エネ導入が促進され、供給不安定な再エネを効果的に利活用するために、蓄電設備の導入が促進される。
省エネ政策 リスク 新規設備投資などのコストが増加する。
機会 産業機器や白物家電のインバータ化が加速し、アルミ電解コンデンサの需要が増加する。
機会 事務機などの省エネ規制が強化されることにより、スイッチング電源の技術的ハードルが高くなり、事業機会が拡大する。
市場 エネルギーミックスの変化 リスク 石油石炭に代わって再エネが中心になり、電気代が高騰する。アルミ電解コンデンサを中心に製造コストが増加する。
重要商品/製品価格の増減 リスク 電気自動車や蓄電システムなどの需要増加による資源価格高騰、蓄電池自体に需給ギャップが生じることによる価格高騰の可能性がある。
機会 アルミ電解コンデンサが売上の中心であったが、インバータ用フィルムコンデンサの需要が増加する。
機会 蓄電池の供給が電気自動車用に優先される場合はV2Hでの事業機会を促進し、需給が緩んだ場合は蓄電システムビジネスへの展開を進める。トライブリッドやDCリンク型産業用蓄電システムにとっては事業機会となる。
技術 再エネ・省エネ技術の普及 機会 再エネ技術の進歩により最小限の設備でエネルギーを創出することが可能となるため、電力が安価になり、製造原価が下がる。
機会 省エネ技術が普及した場合にもエネルギーの利用形態は電化することが想定され、蓄電システムや電気自動車関連の需要は増加する。
評判 顧客の評判変化 リスク BCPの考え方が一般的となり、複数の工場生産体制をすべての製品において整える必要があることから設備投資費用が高騰し、製品原価が上がる。また、BCPにおいて余剰生産能力を要求されることもあり、損益の悪化につながる。
機会 製品そのものだけで評価されるのではなく、環境へ配慮した企業が選定されるようになる。
投資家の評判変化 機会 足元の業績だけでなく、ESGにかかわる取り組みを評価されるようになる。
慢性 平均気温の上昇 リスク 異常気象が頻繁に発生して工場が定期的に停止するようになり、顧客への供給を維持するための余剰生産能力の保持および分散化が必要となる。
機会 企業のBCP強化によって工場を新設、増強する動きが強まり、工場設備に使用されるアルミ電解コンデンサとフィルムコンデンサの需要が増加する。
機会 空調設備に再エネが利活用され、供給不安定な再エネを効果的に利活用するために、蓄電設備の導入が促進される。
降水パターンの変化 リスク 水不足により、一部の生産能力がダウンする。
海面の上昇 リスク 海面上昇により、沿岸に位置するサプライヤーの生産拠点が水没する。
急性 異常気象の激甚化 リスク 洪水の発生により、一部の工場稼働が停止する。
機会 エネルギーの地産地消が進み、蓄電設備の導入が促進される。

1.5℃シナリオ
(2100年に産業革命時期比で気温上昇が1.5℃未満)

各国政府は再生可能エネルギーなどの支援制度を導入し、電力会社はネットゼロに向けて活動を進め、脱炭素化が進みます。脱炭素政策の強化にともない、自動車のEV化や再生可能エネルギーの利活用が加速します。その効果として、気温上昇や異常気象が一定の範囲で収まるため、物理的リスクは大きくありません。
これらの結果、xEV用フィルムコンデンサやEV関連機器、蓄電システムなどの収益が大幅に増加し、物理的リスクの影響は小さくなると考えられるため、最終利益は大幅に増加します。

4℃シナリオ (2100年に産業革命時期比で3.2~5.4℃上昇)

脱炭素化は積極的に推進されず、異常気象の激甚化が想定され、これにより生じる物理的リスクへの対応が重要となります。また、電力会社は化石燃料による発電を継続するためCO2排出係数は低下せず、脱炭素政策の弱まりによって自動車のEV化は一定程度にとどまります。
1.5℃シナリオほど大きな規制面や技術面の影響は想定されませんが、異常気象の被害による影響などから設備投資の事業機会が増加することにより、最終利益は増加します。

リスクマネジメント

当社グループでは、サステナビリティ推進委員会内の環境・エネルギー委員会において、全社的な環境保全や気候変動に関する戦略・方針・目標・計画・施策などを審議し設定するとともに、毎月のサステナビリティ推進委員会にて環境・エネルギー委員会による実施状況のレビューを実施しています。また、本社管理本部に環境管理総括責任者、製造事業所にEMS管理責任者、EMS事務局を置き、環境方針・環境保全計画に沿って活動する体制としています。

サステナビリティ推進委員会において、気候関連リスクのほか、同推進委員会内のコンプライアンス・リスク管理委員会を中心にその他の重要リスクの洗い出しと管理を行っています。

事業継続計画(BCP)や事業継続マネジメント(BCM)に基づくリスク発生時の全社連絡体制を整備しており、危機の発生時には、規模、レベルに応じた対策本部を設置して対策立案と指揮・命令、実行する仕組みとしています。

指標と目標

当社グループは、世界的な地球温暖化抑制のための取り組みに貢献するため、当社グループの事業活動に伴う温室効果ガス排出量(Scope1,2,3※)の削減目標として、2030年度に46%削減(2021年度比)、2050年にカーボンニュートラルを目指します。

また、環境保全や資源維持に向けた産業廃棄物排出量の管理、再資源化量、再資源化率の向上にも積極的に取り組んでいます。

Scope1:燃料使用に伴う直接排出
Scope2:外部から購入する電力の使用に伴う間接排出
Scope3:Scope1,2 以外の間接排出